看護師の妻と培ったホスピスケア観

看護師の妻と培ったホスピスケア観

看護師の妻と培ったホスピスケア観


42歳で在宅ホスピスの道に入り、パリアンを立ち上げたのが53歳になった2000年のこと。スタート当初から、クリニックと訪問看護ステーション、ボランティア組織も一緒に立ち上げた。理由は、白十字診療所での経験から「在宅ホスピスは医師だけでできる医療ではない。むしろ看護が大事だと痛感したから」。

「治す医療は、医師が行う医療を他の職種が支えてくれる。でもホスピスケアでの医師の大事な役割の一つは看護師を支えること」と川越さんは言う。こうした“ホスピスケア観”は、一人ひとりの患者さんを看取るなかで養っていったものだ。

看護師の妻と培ったホスピスケア観

たとえば、だんだんと体が弱ってきて、這ってトイレに行くようになったときにどう対処するか。病院であれば、迷いなく「膀胱留置カテーテル」といって膀胱に管を入れるだろう。しかし、看護師である妻の博美さんから言われたのは、「これを入れることで患者さんがどれだけ苦しむか。少し手はかかるけれど、起こしてあげたらトイレまで行けるし、本人もそう希望している。それなのに、どうしてカテーテルを入れようとするの?」。

「私は、カテーテルを入れた方がケアする側が楽になるし、尿量もわかるので、良いに決まっていると思っていました。カテーテルが痛いということは自分も経験したことがあるのでわかっていましたが、医師という立場ではなかなか違う発想にはならなかったのですね」

同じように、「口から食べられなくなったらどうするか」に対する考えも、病院で医師の立場から考えてきたこととは違った。医師としては、では栄養はどう入れようか、それまで服用していた薬は点滴で入れるか、筋肉注射で入れるか、座薬にするか、といった次の一手を考える。しかし、看護師である博美さんは「患者さんは食べられなくなった自分をどう感じているのか、ご家族はどう感じているのかを考えて、気持ちを汲んでケアするのが大事」と言った。

「最初は病院以上の医療を在宅でやろうと意気込んでいましたが、3カ月も経つ頃には、在宅ホスピスは病院医療の延長ではないこと、不安や苦しみを取り除き、患者さんをみる医療にこそ医の原点があることに気づきました」


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