キャンサーギフトをもらった
ポイントを押さえてメイクをすれば元気な顔を取り戻せる。むしろ、健康だった時よりも元気に見えるかもしれない――。山崎さん自身が助けられた"キレイの力"を、知りたい人がいたら伝えよう、困っている人がいれば教えてあげたい。そう考えて、女性誌の連載で、自らの体験と医療者への取材、役立つ情報を発信したところ、がん患者さんをサポートするNPOから「患者さん向けに話をしてほしい」という依頼が舞い込んだ。
今では、病院や患者会などでがん患者や医療者を対象に講演やメイクアップセミナーを行ったり、雑誌で「キレイ塾」という連載を執筆したり、がんに関するムック本の執筆を手掛けたり、美容ジャーナリストという本業以上に、がん患者さんのサポートに関する仕事が増えている。また仕事以外でも、乳がん患者仲間と、女性の乳房と健康を守る応援団「マンマチアー委員会」を立ち上げ、月に1度、"チアー活動"と称して、がん治療や女性の健康に関するセミナーを行っている。

「人生は、がんになっても続いていく」。そう山崎さんは話す。がんになって、運動能力や記憶力など、以前に比べて損なわれたものは確かにある。
「治療をしながら加齢もしているのだから、治療が終わったからと言って病気になる前の自分に戻ることはあり得ません。でも、すべてをなくしたわけではないし、昔は興味を持たなかったことに興味を持つようになるかもしれない。今の自分にふさわしいことに目を向けた方が絶対に楽しいし、絶対に楽です」
病気にならずに、美容ジャーナリストの仕事を続けていたら――? 「もしかしたら途中で擦り切れたか、飽きちゃっていたかもしれませんね」と笑う。
がんを経験したからこそ、「キレイでいることが人の気持ちを明るくし、笑顔にし、人生も明るくしてくれるということ。周りの人にもいい影響を与えて、社会を明るくするんだ!」ということを知った。そして、困っている人にキレイを取り戻す方法を伝えられるということに気づいた。
「人の役に立てることが自分にできるって、嬉しいことでしょう?私にとってこれが"キャンサーギフト"かもしれません」
(2013年11月)