プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2024年5月25日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。英語版は、https://www.novartis.comをご参照下さい。
- ALIGN試験において、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬による支持療法に上乗せでatrasentanを投与した場合、支持療法に加えてプラセボを投与した場合と比較して、投与36週時点で統計的に有意である36.1%の蛋白尿(尿中蛋白)減少を示した1
- エンドセリンA(ETA)受容体の活性化は、IgA腎症における蛋白尿増加の一因となる2,3,4,5。Atrasentanは強力で選択的なETA受容体拮抗薬であり、幅広い患者集団に対して蛋白尿を持続的に減少させ、腎機能を維持させる可能性がある1
- IgA腎症は進行する異質性が高い(heterogenous)希少腎疾患であり、有効な標的療法を必要としている6,7。持続性蛋白尿(1g/日以上)を有する患者の最大30%が10年以内に腎不全に進行する8
- ノバルティスは、希少腎疾患のポートフォリオを通じ、IgA腎症の進行を遅らせる様々な作用機序を有する複数の治療選択肢の探索に取り組んでいる。
2024年5月25日、スイス・バーゼル発―ノバルティスは本日、IgA腎症患者を対象とする選択的経口エンドセリンA(ETA)受容体拮抗薬であるatrasentanの第III相ALIGN試験で事前に規定した中間解析の結果を発表しました1。支持療法(レニン・アンジオテンシン系[RAS]阻害薬の最大耐量および安定用量)に加えてatrasentanを投与された患者では、支持療法に加えてプラセボを投与された患者と比較して、36週時点で蛋白尿(24時間畜尿による尿蛋白/ クレアチニン比[UPCR]で評価)が36.1%減少しました(p<0.0001)1。この結果は、欧州腎臓学会(ERA)学術集会のlate-breaking clinical trial sessionで発表されました1。本試験では、atrasentanが過去に報告されたデータと同様の良好な安全性プロファイルを有することも示されました1,9。
蛋白尿の減少は腎不全への進行抑制と相関する代替マーカーとして認識されており、海外規制当局による迅速承認をサポートするIgA腎症の臨床試験における評価項目として使用されています10。AtrasentanのIgA腎症に対する米国食品医薬品局(FDA)への承認申請は、2024年前半を予定しています。
IgA腎症財団の理事兼共同設立者のBonnie Schneiderは、以下のように述べています。「IgA腎症患者とその家族にとって、この疾患は身体だけでなく精神にも重大な影響を及ぼすことがあります。20年前に息子のEddieがIgA腎症と診断された時、FDAに承認されたIgA腎症の治療薬はありませんでした。そのことはIgA腎症と診断されたことと同じくらい衝撃的でした。なぜならば、この疾患をどう治療すればよいか全く分からず、絶望的な思いをしたからです。この疾患は人によって影響が異なり、ある人には効く治療が別の人には効かない場合があります。私たちは、さまざまな治療法の研究が進められていることを嬉しく思っており、患者個々のニーズに合った選択肢を持てるようになる将来を楽しみにしています。」
ALIGN試験は盲検下で継続されているため、限られた中間解析結果しか発表できません11,12。主な副次評価項目である136週時点の推算糸球体濾過量(eGFR)のベースラインからの変化量および探索的コホートにおいて基礎治療としてSGLT2(ナトリウム-グルコース共輸送体2)害薬の投与を受けた患者集団での結果を含む最終解析は2026年に実施予定です11,12。
University Medical Center Groningen、Department of Clinical Pharmacy and Pharmacologyの臨床試験および個別化医療の教授であり、ALIGN試験の盲検下治験運営委員会委員長のHiddo Heerspink教授は、以下のように述べています。「ETA受容体の活性化は、通常IgA腎症の最初の臨床徴候のひとつである蛋白尿を引き起こします。蛋白尿が持続する患者は予後が悪く、腎不全に進行する可能性が高いです。治療の経過全体にわたって、IgA腎症患者の助けとなる標的治療の選択肢が必要です。ALIGN試験の結果は、atrasentanが蛋白尿を有意に減少させること、また、承認された場合、IgA腎症患者にとって現在の支持療法にシームレスに追加できる新たな基礎治療となる可能性を示しています。」
ノバルティスの循環器・腎臓・代謝でデベロップメントユニットのグローバルヘッドであるDavid Soergel, M.D.は、以下のように述べています。「Atrasentanは、この複雑な疾患を抱える多くの人々のためにIgA腎症の治療法を変革する一助となる可能性を秘めています。複数製品で構成される当社のIgA腎症ポートフォリオは、さまざまな作用機序を持ち、疾患の異なる要因に対処することで幅広い異質な患者集団のニーズに対応することを目指しています。これにより、この治療領域における患者ケアの改善を最終目標としています。」
当社はまた、希少疾患ポートフォリオ全体にわたって新たなデータをERAで発表しています。その内容は、C3腎症に対するイプタコパンの第III相APPEAR-C3G試験の6ヵ月時点のデータ、C3腎症に対するイプタコパンの第II相継続試験の33ヵ月時点の長期有効性・安全性データ、IgA腎症に対する治験薬zigakibartの1年間の第I/II相試験データ、C3腎症および非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)に対するリアルワールド試験のデータなどです13,14,15。
ALIGN試験について
ALIGN試験(NCT04573478)は、腎機能低下が進行するリスクのあるIgA腎症患者を対象として、atrasentanの有効性および安全性をプラセボと比較する、国際共同、無作為化、多施設共同、二重盲検、プラセボ対照の第III相試験です11,12。RAS阻害薬による至適治療にもかかわらず、ベースラインの総蛋白尿が1g/日以上で、生検でIgA腎症と確定診断された患者340名が、約2.5年間(132週間)にわたりatrasentan(0.75 mg)またはプラセボを1日1回経口投与するコホートに無作為に割り付けられました11,12。患者は、支持療法として最大耐量かつ安定用量のRAS阻害薬の投与を継続して受けます(RAS阻害薬に対する忍容性が良好でない場合を除く)11,12。また、安定用量のSGLT2阻害薬を12週間以上に投与されている患者64名も追加コホートとして登録されています11,12。
本治験の主要有効性評価項目は、24時間畜尿によるUPCRで評価した蛋白尿のベースラインから36週時点までの変化です11,12。副次的および探索的目的には、eGFRで評価するベースラインから136週時点までの腎機能の変化、ならびに安全性および忍容性の評価が含まれています11,12。
Atrasentanについて
Atrasentanは、強力で選択的な経口ETA受容体拮抗薬です。現在、IgA腎症に対する治療薬としては第III相開発段階にあり、その他の希少腎疾患に対する治療薬としては開発初期段階にあります1,11,12,16。ETA受容体の活性化はIgA腎症における腎障害、線維化、および腎機能喪失と関連する蛋白尿の増加に寄与しています2,3,4,5。Atrasentanは、幅広い患者集団において持続性蛋白尿を減少させ、腎機能を保持するために現在の支持療法に追加で使用される可能性をもっています1。前臨床モデルでは、atrasentanがIgA腎症において炎症および線維化を軽減させる可能性も示唆されています17,18,19,20。
IgA腎症について
IgA腎症は進行する異質性が高い希少腎疾患です6。毎年、全世界で100万人あたり約25人が新たにIgA腎症と診断されています21。
高い蛋白尿(1 g/日以上)が持続するIgA腎症患者の最大30%で、10年以内に腎不全に進行する可能性があります8。IgA腎症には、腎不全への進行を遅らせる、または防ぐことができる有効な標的療法が必要です6,7,22。
希少腎疾患におけるノバルティスの取り組み
ノバルティスの腎臓病学における歩みは40年以上前に始まり、シクロスポリンの開発および導入により移植と免疫抑制の分野を再構築する一助となりました。当社は、腎疾患と共に生きる患者の生活を一変させるという大志を今も抱き続けています。
当社のポートフォリオを通じて私たちは、IgA腎症、C3腎症、aHUS、免疫複合体型膜性増殖性糸球体腎炎(IC-MPGN)、ループス腎炎(LN)などの希少疾患を抱える人々が直面しているアンメットニーズに対処するための潜在的な治療選択肢を探索しています。これらの疾患の根本原因を標的とする革新的な治療選択肢は、腎機能の保持、透析や移植を必要としない生存期間の延長に役立つ可能性があります。
IgA腎症は多様な臨床症状、表現型および進行速度を呈する異質性疾患です6。ノバルティスはatrasentanに加え、作用機序が大きく異なる抗APRILモノクローナル抗体の皮下投与治験薬zigakibartの開発も進めており、現在は第III相の開発段階にあります23。IgA腎症パイプラインを通じて当社は、腎臓病患者の生活を改善し、生存期間を延長する革新的な医薬品ポートフォリオの構築に取り組んでいます。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了承ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、革新的医薬品の研究、開発、製造、販売を行うグローバル製薬企業です。ノバルティスは、患者さん、医療従事者、社会全体と共に病に向き合い、人びとがより充実した健やかな毎日が過ごせるため「医薬の未来を描く (Reimagining Medicine)」ことを追求しています。ノバルティスの医薬品は、世界中で2.5億人の患者さんに届けられています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
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以上
参考文献
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