この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2024年5月31日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。英語版は、https://www.novartis.comをご参照下さい。
- レミブルチニブを投与した患者において、投与1週時点と早期から蕁麻疹活動性スコア(UAS7)の改善が認められ、1年(52週)後まで維持された1
- 経口ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であるレミブルチニブは、1年後まで良好かつ一定した安全性プロファイルを示し、肝機能検査値はプラセボと同程度であった1
- ノバルティスは、2024年下半期から各国の保健当局に対して、慢性特発性蕁麻疹(CSU)を対象にレミブルチニブの承認申請を行う予定であり、他の免疫介在性疾患においても開発の検討をしている。
- データから、ヒスタミンH1受容体拮抗薬でコントロールできず、苦痛を伴う生活を続けるCSU患者の50%以上に対して、レミブルチニブがファースト・イン・クラスの治療薬となる可能性を再確認した1,2
2024年5月31日、スイス・バーゼル発―ノバルティスは本日、慢性特発性蕁麻疹(CSU)を対象に、高い選択性を示すブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤レミブルチニブの長期的な有効性および安全性を裏づける新たなデータを発表しました1。主要第III相検証試験(REMIX-1試験およびREMIX-2試験)で、第二世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬を使用してもなお症状が持続していたCSU患者を対象にレミブルチニブを投与したところ、早期に有意な症状改善を示し、投与52週まで維持されました1。このデータは、5月31日~6月3日にスペインのバレンシアで開催された2024年欧州アレルギー臨床免疫学会(EAACI)で発表されました。
ドイツのシャリテ・ベルリン医科大学皮膚科学部門のMartin Metz教授は次のように述べています。「大多数のCSU患者さんは、症状のコントロールが不十分で苦痛を抱えながら生活しており、多くの場合、高用量のヒスタミンH1受容体拮抗薬を繰り返し服用して症状を管理しようとしても持続的な効果が得られず、日常生活に大きな影響が及んでいます。レミブルチニブはBTKカスケードを阻害して、ヒスタミンの放出を抑えることから、CSUの重要な治験薬となっています。このデータから、レミブルチニブが患者さんと医師に、早期かつ持続的な効果をもたらす忍容性が良好な経口治療を提供する可能性を示しています。」
投与52週時に評価した長期第III相REMIX-1試験およびREMIX-2試験の新たなデータから、以下のことが示されました1。
- これまで投与12週時に示されたように、レミブルチニブによるプラセボに対して有意な改善が、投与24週時の蕁麻疹活動性スコア(UAS7)、そう痒重症度スコア(ISS7)、膨疹重症度スコア(HSS7)などでも確認されました。
- 投与24週時に、プラセボが投与されていた患者をレミブルチニブに切り替えたところ、投与された最初の週にレミブルチニブによる有効性が認められ、試験終了時まで(投与期間28週間)持続しました。
- 投与52週時の評価では、ほぼ半数の患者のそう痒と膨疹が完全に消失していました(UAS7=0)。
Global Allergy and Airways Patient Platformのプレジデント兼CEOであるTonya Winders氏は次のように述べています。「CSUを抱えながらの生活は、その症状を予測できず、いつ再燃するかが分からないために、非常に苦痛を伴うことがあります。症状は顔、喉、手、足に生じ、皮膚に灼熱感や疼痛を感じることもあります。残念ながら、コントロールできない症状に対処し続けている人が大勢います。慢性特発性蕁麻疹に関する知見を深める今後の研究を歓迎します。」
レミブルチニブの忍容性は良好で、投与52週時まで良好かつ一貫した安全性プロファイルを示し、肝機能検査値はプラセボと同程度でした1。24週間のプラセボ対照期間中の有害事象(AE)については、重篤なAEやAEによる投与中止を含め、レミブルチニブとプラセボの間に差はみられませんでした1。また、発現率を曝露量で補正しても、長期投与によるAEの増加は認められませんでした1。肝トランスアミナーゼ値の上昇はレミブルチニブ群およびプラセボ群で同程度であり、無症候性で一過性であり、かつ可逆的でした1。治験担当医師により治験薬と関連ありと判断された重篤なAEは認められませんでした。
ノバルティスの開発部門、免疫部門のグローバルヘッドであるAngelika Jahreisは次のように述べています。「蕁麻疹は、患者さんのQOLに重大な影響を及ぼす疾患であり、新たな治療選択肢が早急に必要とされています。試験開始時に中等度から重度の蕁麻疹を発症していた多くの患者さんに52週間投与すると、そう痒と膨疹の完全な消失がみられ、高い選択性を示す経口BTK阻害剤レミブルチニブの良好な忍容性が維持されたことから、52週間の第III相REMIX-1試験およびREMIX-2試験のデータは重要です。今年後半には、この素晴らしい長期データを各国の保健当局に提出する予定です。」
レミブルチニブはCSU以外の化膿性汗腺炎などの免疫介在性疾患においても開発の検討が進められており、第II相試験で主要評価項目を達成しています3。このほか、食物アレルギーや、慢性刺激誘発性型蕁麻疹、多発性硬化症おいても開発が検討されています4-8。ノバルティスは、2024年下半期から各国の保健当局に対して、CSUを対象にレミブルチニブの承認申請を行う予定です。
レミブルチニブについて
レミブルチニブは、選択性の高い共有結合型の開発中の経口BTK阻害剤で、BTKカスケードを阻害し、かゆみ(膨疹)や腫脹を引き起こすヒスタミンの放出を抑えます9-11。標準用量のヒスタミンH1受容体拮抗薬と併用すると、炎症経路の2つの部分を標的とする「二方面からのアプローチ」となり、レミブルチニブがヒスタミンの放出を阻害し、ヒスタミンH1受容体拮抗薬がヒスタミン受容体を阻害してCSUの症状が軽減されます12,13。主要第III相検証試験(REMIX-1試験およびREMIX-2試験)では、第二世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬を使用してもなお症状が持続していたCSU患者を対象に、レミブルチニブは主要評価項目をすべて達成しました1。レミブルチニブを投与すると、早期に有意な症状改善がみられ、投与52週まで維持されました1。レミブルチニブの忍容性は良好で、投与52週時まで良好な安全性プロファイルを示し、肝機能検査値はプラセボと同程度でした1。第III相REMIX試験で最も多く(5%以上)認められた有害事象は、気道感染(COVID-19および鼻咽頭炎を含める)と頭痛であり、いずれもプラセボと同程度でした1,14。CSUを対象にレミブルチニブが承認されると、現在CSUを適応症とする最初の生物学的注射製剤である「ゾレア®」(一般名:オマリズマブ、以下「ゾレア」)を含むノバルティスの免疫領域ポートフォリオの中で、効果的な経口薬の選択肢になる可能性があります15。米国ではノバルティス ファーマとロシュ・グループの一員であるジェネンテック社が共同で「ゾレア」の開発とプロモーションを行っています。CSUのほかに、いくつかの免疫介在性疾患を対象にレミブルチニブの検討が進められており、製品パイプラインとなる可能性があります4-8。
REMIX-1試験およびREMIX-2試験について
REMIX-1試験(NCT05030311)およびREMIX-2試験(NCT05032157)は、同一デザインによる国際多施設共同、無作為化、二重盲検、並行群間、プラセボ対照第III相検証試験で、REMIX-1試験には470名、REMIX-2試験には455名が組み入れられています16,17。両試験とも、第二世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬でコントロール不十分な成人CSU患者を対象として、レミブルチニブ 25 mgの1日2回投与の有効性、安全性および忍容性をプラセボと比較することを目的にデザインされています1,16,17。主要評価項目は、投与12週時における蕁麻疹活動性スコア(UAS7)、そう痒重症度スコア(ISS7)および膨疹重症度スコア(HSS7)のベースラインからの絶対変化量としています16,17。すべての被検者は、試験期間全体を通じて第二世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬の各国で承認されている用量を投与しました16,17。
慢性特発性蕁麻疹(CSU)について
CSUは、6週間以上持続する慢性特発性蕁麻疹の医学用語で、この疾患の根本的原因はアレルゲンへの曝露や外的誘因ではなく内的要因です2,11,18。世界中で約4,000万人がCSUに罹患しています2,19。CSUの特徴は、かゆみを伴う皮疹(膨疹)もしくは深部組織の腫脹(顔、喉、手、足に発生する血管性浮腫)またはその両方が急に現れることです11,20。CSUは全年齢で発症しますが、20~40歳に好発し、女性の発症率は男性の約2倍です2。CSUは精神的苦痛が大きく、患者の大半が睡眠不足に悩んでおり、不安や抑うつなどの精神障害の発生率が高く、労働生産性にも影響を及ぼしています2。ヒスタミンH1受容体拮抗薬は、ヒスタミン受容体を遮断して、そう痒や腫脹の原因となるヒスタミンの炎症促進作用を阻害することから、CSUに対して処方されることが多い薬剤です13,18。しかし、ヒスタミンH1受容体拮抗薬単独ではコントロールできないCSU患者が50%以上を占めています2。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了承ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、革新的医薬品の研究、開発、製造、販売を行うグローバル製薬企業です。ノバルティスは、患者さん、医療従事者、社会全体と共に病に向き合い、人びとがより充実した健やかな毎日が過ごせるため「医薬の未来を描く (Reimagining Medicine)」ことを追求しています。ノバルティスの医薬品は、世界中で2.5億人の患者さんに届けられています。詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.com
ノバルティスのソーシャルメディアもご覧ください。Facebook LinkedIn X/Twitter Instagram
以上
参考文献
- Metz M, Giménez-Arnau A, Hide M, et al. Long-term efficacy and safety of remibrutinib in patients with chronic spontaneous urticaria in the Phase 3 REMIX-1 and REMIX-2 studies. Presented as a late-breaking abstract at EAACI 2024; May 31-June 3, 2024; Valencia, Spain.
- Maurer M, Weller K, Bindslev-Jensen C, et al. Unmet clinical needs in chronic spontaneous urticaria. A GA²LEN task force report. Allergy 2011; 66: 317-330.
- Kimball A, Prens E, Bechara F, et al. Efficacy and safety of the oral Bruton’s tyrosine kinase inhibitor, remibrutinib, in patients with moderate to severe hidradenitis suppurativa in a randomized, phase 2, double-blind, placebo-controlled platform study. Presented as a late-breaking abstract at the American Academy of Dermatology Annual Meeting; March 8-12, 2024; San Diego, California.
- ClinicalTrials.gov. NCT05156281. Efficacy and safety of remibrutinib compared to teriflunomide in participants with relapsing multiple sclerosis (RMS) (REMODEL-2). Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05156281 [Last accessed: May 2024].
- ClinicalTrials.gov. NCT05147220. Efficacy and safety of remibrutinib compared to teriflunomide in participants with relapsing multiple sclerosis. Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05147220 [Last accessed: May 2024].
- ClinicalTrials.gov. NCT03827798. Study of efficacy and safety of investigational treatments in patients with moderate to severe hidradenitis suppurativa. Available from: https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03827798. [Last accessed: May 2024].
- ClinicalTrials.gov. NCT05432388. Study of efficacy, safety and tolerability of remibrutinib in adult participants with an allergy to peanuts. Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05432388 [Last accessed: May 2024].
- ClinicalTrials.gov. NCT05976243. Study to investigate efficacy, safety, and tolerability of remibrutinib compared with placebo in adults with CINDU inadequately controlled by H1-antihistamines. Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05976243. [Last accessed: May 2024].
- Maurer M, Berger W, Giménez-Arnau A, et al. Remibrutinib, a novel BTK inhibitor, demonstrates promising efficacy and safety in chronic spontaneous urticaria. J Allergy Clin Immunol 2022; 150: 1498-1506.
- Angst D, Gessier F, Janser P, et al. Discovery of LOU064 (remibrutinib), a potent and highly selective covalent inhibitor of Bruton's Tyrosine Kinase. J Med Chem 2020; 63: 5102-5118.
- Powell RJ, Leech SC, Till S, et al. BSACI guideline for the management of chronic urticaria and angioedema. Clin Exp Allergy 2015; 45: 547-565.
- Jain V, Giménez-Arnau A, Hayama K, et al. Remibrutinib demonstrates favorable safety profile and sustained efficacy in chronic spontaneous urticaria over 52 weeks. J Allergy Clin Immunol 2024; 153: 479-486.
- Patient. Antihistamines. Last updated 12 October 2022. Available from: https://patient.info/allergies-blood-immune/allergies/antihistamines [Last accessed: May 2024].
- Novartis, Data on file.
- Genentech USA, Inc. and Novartis Pharmaceuticals Corporation. Xolair Omalizumab. Chronic Spontaneous Urticaria (CSU). Available from: https://www.xolair.com/chronic-spontaneous-urticaria.html [Last accessed: May 2024].
- ClinicalTrials.gov. NCT05032157. A Phase 3 study of efficacy and safety of remibrutinib in the treatment of CSU in adults inadequately controlled by H1- antihistamines (REMIX-2). Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05032157 [Last accessed: May 2024].
- ClinicalTrials.gov. NCT05030311. A Phase 3 study of efficacy and safety of remibrutinib in the treatment of CSU in adults inadequately controlled by H1 antihistamines (REMIX-1). Available from: https://clinicaltrials.gov/study/NCT05030311 [Last accessed: May 2024].
- Zuberbier T, Abdul Latiff AH, Abuzakouk M, et al. The international EAACI/GA²LEN/EuroGuiDerm/APAAACI guideline for the definition, classification, diagnosis, and management of urticaria. Allergy 2022; 77: 734-766.
- The World Bank. Population, total. Available from: https://data.worldbank.org/indicator/SP.POP.TOTL [Last accessed: May 2024].
- AAAAI (American Academy of Allergy, Asthma & Immunology). Hives (Urticaria) and Angioedema Overview. Available from: https://www.aaaai.org/tools-for-the-public/conditions-library/allergies… [Last accessed: May 2024].
印刷するには以下の印刷ボタンをクリックし、次のページで右クリックの上、メニューの「印刷」を選択してください。
また、この文章は印刷ページにも表示されます。