Nov 20, 2025

プレスリリース

報道関係各位

ノバルティス ファーマ株式会社

ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:ジョンポール・プリシーノ、以下「ノバルティス ファーマ」)は、本日、眼科用血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤「ベオビュ®硝子体内注射用キット120mg/mL」(一般名:ブロルシズマブ、以下「ベオビュ」)について、増殖糖尿病網膜症(以下、PDR)に対する効能又は効果の追加および中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(以下、nAMD)の導入期の用法追加の承認を取得したことをお知らせします。

PDRは、糖尿病網膜症が最も進行した段階であり、新生血管、硝子体出血、または網膜前出血のいずれかが見られます。日本では、PDRに対して汎網膜光凝固(PRP)というレーザー治療が標準治療として実施されていますが、これまで承認された治療薬はありませんでした。しかし、PRPは、視力の低下や周辺視野の狭窄、黄斑浮腫による一時的な中心視野の変化など、視機能に影響を及ぼす可能性のある合併症が報告されており2、有害事象および合併症のリスクが少ない新たな治療法と、侵襲性の低い治療薬が求められていました。

一方、2020325日に承認を取得しているnAMDに対しては、これまでの導入投与が4週ごとであることから、頻繁な来院および推奨された投与間隔の硝子体内投与が患者やその家族、医療従事者にとって大きな負担をもたらし、治療アドヒアランスの低下およびそれに伴う視力予後の悪化につながる可能性が指摘されています3。今回の用法追加の承認により、導入期における投与間隔が従来の4週ごとから6週ごとになったことで、医師の判断に基づき、患者の状態に応じた柔軟な治療選択が可能となりました。これにより、患者、介護者、そして医療従事者の負担軽減が期待されています。

このたびの承認について、ノバルティス ファーマ株式会社 代表取締役社長 ジョンポール・プリシーノは次のように述べています。「これまでPDR患者さんにとって、PDRの進行を抑えるのはレーザー治療が主たる治療法でした。しかし、ベオビュのPDRに対する承認により、患者さんにレーザー治療以外の新たな治療選択肢を提供できるだけでなく、視力の維持、さらには改善へとつながる可能性が広がります。また、nAMDの患者さんにとっては、導入期の投与間隔が従来の4週間隔で3回に加えて、6週間隔で2回または3回という選択肢が増えることで、患者さんのニーズに応じて治療ができるようになり、患者、介護者、そして医療従事者の負担軽減につながると考えています。疾患による視力の低下や喪失を防ぐことは、患者さんの日常生活における自立性を確保し、社会参画を可能にするうえで極めて重要です。今後も、患者さん一人ひとりの生活の質の向上に貢献できるよう、革新的な治療の提供に努めてまいります」。

増殖糖尿病網膜症(PDR)

PDRは自然経過における糖尿病網膜症(DR)の末期状態であり、新生血管、硝子体出血、または網膜前出血が見られます。PDRDR患者の16%~31%4を占めます。PDRでは毛細血管の閉塞により不足した酸素を補うために網膜新生血管が発生し、網膜新生血管は脆弱で出血しやすく、硝子体内に伸長する傾向があるため、硝子体出血や網膜剥離を起こし、視力低下や失明の原因となります5。現在の標準治療であるPRPは、網膜にレーザーを照射することで病変の進行を抑える治療法ですが、網膜組織への影響により、視力や周辺部網膜の感度に変化が生じる可能性があることが課題とされています6

中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性(nAMD)

nAMDは、加齢に伴って発症する網膜黄斑部の変性疾患であり、重度の視力低下を引き起こす難治性眼科疾患です。脈絡膜新生血管を特徴とし、進行が早く、未治療では急速に重度の視力喪失に至ります6。日本では50歳以上の人の約1%にみられ、高齢になるほど多くみられます7。現在の標準治療は、VEGF阻害薬による硝子体内注射があり、脈絡膜新生血管の活動を抑えることで視力の維持・改善が期待されています。ただし、いずれの薬剤も導入期には4週ごとの通院が必要であり7、長期治療に伴う患者負担が課題とされています。

D2301試験について

PDRに対する承認は、国際共同第III試験(D2301)の結果に基づくものです。本試験は、PDR患者689名(日本人50名を含む)を対象に、PRPを対象としたランダム化単遮蔽比較試験です。ベオビュ群(347名)は、導入期として本剤を6週間ごとに3回投与した後、12週間ごとの投与を基本とし、疾患活動性が見られた場合、6週ごとでの投与も可能としました。48週目以降は、疾患活動性の評価に基づき、投与間隔を一度に6週間ずつ、最大24週ごとまで延長、また12週ごとに戻すことも可能としました。一方、PRP群(342人)では、初回治療を最大4回に分けて12週目まで完了し、その後は必要に応じて追加治療が行われました。各患者のWeek 54 までに得られたデータを用いて実施した解析における、主要評価項目の視力の改善度(最高矯正視力スコアのベースラインからの変化量)では、ベオビュ群は平均0.2文字の改善を示したのに対し、PRP群では平均4.2文字の低下が見られたことから、ベオビュは汎網膜光凝固に対して非劣性だけでなく、優越性も示されました。さらに、54週時点で病期の改善が確認された患者の割合は、ベオビュ群で63.8%PRP群では22.4%と差があり、ベオビュの優越性が確認されました8。また、D2301試験で得られた安全性の結果は、既知の安全性プロファイルと同様であり、新たな安全性シグナルは認められませんでした。

母集団薬物動態/薬力学モデルによるシミュレーションについて

nAMDの導入期における用法追加の承認は母集団薬物動態/薬力学モデルによるシミュレーションの結果に基づくものです。nAMD患者を対象に、ベオビュを導入期として6週ごとに2回または3回投与し、その後の維持期において12週または8週ごとに投与した際のシミュレーションの結果を、nAMDを対象とした国際共同第III試験(C001およびC002)のベオビュ投与群(本剤6mgを導入期として4週ごとに3回投与し、その後の維持期において12週または8週ごとに投与)の臨床試験結果と比較したところ、同様の有効性が予測されました9

「ベオビュ」について

「ベオビュ」は、血管内皮増殖因子(VEGF-Aに対する遺伝子組換え一本鎖抗体フラグメントで、VEGF-Aの受容体結合部位に結合することにより、血管内皮細胞表面に発現する受容体(VEGFR1およびVEGFR2)へのVEGF-Aの結合を阻害します。本剤は本邦で、20203月にnAMDに対する治療薬として承認され、20226月には糖尿病黄斑浮腫の効能又は効果が追加されました。202511月には、PDRに対する効能又は効果の承認およびnAMDの導入期の用法追加の承認を取得しました。

ノバルティス ファーマ株式会社について

ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く革新的医薬品のグローバル製薬企業、ノバルティスの日本法人です。ノバルティス ファーマは、より充実した健やかな毎日のために、「医薬の未来を描く(Reimagining Medicine)」ことを追求しています。
詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.co.jp
ノバルティス ファーマ株式会社のソーシャルメディアもご覧ください。 Facebook LinkedIn YouTube Instagram

以上

参考文献

  1. Flaxel CJ, et al.: Ophthalmology 2020; 127(1): P66-P145
  2. Bahr, T. A., & Bakri, S. J. (2023). Update on the Management of Diabetic Retinopathy: Anti-VEGF Agents for the Prevention of Complications and Progression of Nonproliferative and Proliferative Retinopathy. Life, 13(5), 1098. https://doi.org/10.3390/life13051098
  3. Prenner JL, Halperin LS, Rycroft C, Hogue S, Williams Liu Z, Seibert R. Disease Burden in the Treatment of Age-Related Macular Degeneration: Findings From a Time-and-Motion Study. Am J Ophthalmol. 2015 Oct;160(4):725-31.e1. doi: 10.1016/j.ajo.2015.06.023. Epub 2015 Jul 2. PMID: 26142721.
  4. Kato S, Takemori M, Kitano S, et al. (2002) Retinopathy in older patients with diabetes mellitus. Diabetes Res Clin Pract; 58(3):187-92  
  5. Tang J and Kern TS (2011) Inflammation in diabetic retinopathy. Prog Retin Eye Res; 30(5):343-58. 
    Al-Kharashi AS (2018) Role of oxidative stress, inflammation, hypoxia and angiogenesis in the development of diabetic retinopathy. Saudi J Ophthalmol; 32(4):318-23.
  6. 社内資料:臨床に関する概括評価(CTD 2.5
  7. Japan Ophthalmological Society website.(https://www.nichigan.or.jp/public/disease/name.html?pdid=52)
  8. 社内資料:臨床に関する概括評価(CTD 2.5_nAMD
  9. 社内資料:目標適応症に対する有効性(20251120日承認、CTD2.5-4.2(中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性))

 

<参考資料>
「ベオビュ®硝子体内注射用キット120mg/mL」の製品概要

製品名:
「ベオビュ®硝子体内注射用キット120mg/mL

一般名:
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)

効能又は効果*(下線部が今回追加):
〇中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性
〇糖尿病黄斑浮腫
増殖糖尿病網膜症

用法及び用量*(下線部が今回追加):
〈中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性〉
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として6mg0.05mL)を導入期においては4週ごとに1回、 連続3回硝子体内投与する。または、6週ごとに1回、 連続2回硝子体内投与するが、症状により1回追加投与できる。 その後の維持期においては、通常、12週ごとに1回、硝子体内投与する。 なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。

〈糖尿病黄斑浮腫〉
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として 6mg0.05 mL)を 6週ごとに 1回、通常、連続回(導入期)硝子体内投与するが、症状により投与回数を適宜減じる。その後の維持期において は、通常、12週ごとに 1回、硝子体内投与する。なお、症状により投与間隔を適宜調節する が、8週以上あけること。

〈増殖糖尿病網膜症〉
ブロルシズマブ(遺伝子組換え)として6mg0.05mL)を 6週ごとに1回、通常、連続3回(導入期)硝子体内投与するが、 症状により投与回数を適宜増減。その後の維持期においては、 通常、12週ごとに1回、硝子体内投与。 なお、症状により投与間隔を適宜調節するが、8週以上あけること。

承認取得日:
2025年11月20日

製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社

*「効能又は効果に関連する注意」、ならびに「用法及び用量に関連する注意」の詳細については、電子化された添付文書(電子添文)をご覧下さい。

 

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