SMAは、生存運動ニューロンタンパク質をコードするSMN1(survival motor neuron 1)遺伝子の欠損によって引き起こされる希少かつ多くの場合は重篤な遺伝性疾患であり、運動ニューロンの急速かつ不可逆的な消失に至り、呼吸、嚥下及び基本運動を含む筋肉機能に影響を及ぼす。
SMAは稀な疾患であるが、乳児死亡の主要な遺伝的原因である。不可逆的な運動ニューロンの消失及び疾患の進行を止めるためには、できる限り早期にSMAを診断し、積極的な支持療法を含む治療を開始することが不可欠である。
SMAの4つの主な病型
SMAには主に4つの病型があります。SMAの重症度は、機能性SMNタンパク質をわずかに産生する(SMN1遺伝子の10%程度) 「バックアップ遺伝子」 であるSMN 2遺伝子のコピー数によって異なります。
1型:通常SMN 2遺伝子のコピー数が1~2
- 全SMA症例の約60%が1型である
- 診断を伴う早期発症は通常乳児の生後6ヵ月以内
- 未治療の場合、90%以上の症例で2歳までに死に至る、又は永続的な換気及び栄養補給の必要性に至る
- 症状は、呼吸困難、嚥下困難、頭部のコントロール不良、泣き声の減弱、筋力低下の悪化及び筋緊張の低下(筋緊張低下)であり、 蛙足肢位(仰向けで寝かせたときに“カエルの足”のように足がベタっと床につく)に至る
2型:通常SMN 2遺伝子のコピー数が2~3
- 生後6~18ヵ月で発症
- 平均余命の短縮;治療しなければ、30%以上が25歳までに死亡する
- ほとんどの場合、支持なしに立つことができない
- 発達の初期には自力で座ることができるが、10代半ばまでには座ることができなくなることがよくある
- 手指のふるえや、脊柱側弯症や股関節脱臼などの骨格異常がみられることがある
- 授乳や呼吸が困難になることが多い
3型:通常SMN 2遺伝子のコピー数が3~4
- 多くの場合、症状は小児期の初期から成人期の初期に現れる
- 歩行、走行、階段の昇降が困難になる
- 時間の経過とともに、支えなしで立ったり歩いたりする能力が失われることがある
- 腕よりも脚に症状が重く出る
4型:成人発症
- 非常にまれ
- 症状は18歳以降に現れることもありますが、通常は30歳以降に現れる
- 移動特性は3型に類似している
SMAの遺伝的背景
ヒトのDNAには多くの遺伝子があります。SMAに関与する遺伝子はSMN 1とSMN 2の2つです。
SMN 1遺伝子:遺伝的オッズ
変異した(変化した)又は欠損したSMN 1遺伝子を受け継いでいると、筋肉を制御するニューロンの生存に不可欠なSMN(survival motor neuron:生存運動ニューロン)タンパク質の産生が十分にできなくなります。結果、SMAと呼ばれる進行性の(そして最も重度型ではしばしば致死的な)筋力低下の疾患の発症に至ります。
患者は通常、両親からSMN 1遺伝子のコピーを1つずつ受け取ります。十分な量のSMNタンパク質を産生するためには、機能するSMN 1遺伝子が1つあれば十分です。言い換えると、SMAは潜性形質であるため、両親が健康であっても、変異もしくは欠損したSMN 1遺伝子を保有している可能性があります。子供がこれらの変異または欠損したSMN 1遺伝子を両方受け継いだ場合、SMAが発症します。
約54人に1人がSMN1遺伝子の変異または欠損を有していると言われており、また保因者2人がSMAの子供を持つ確率は25%です。
SMN 2遺伝子:SMN蛋白質の二次供給源
タンパク質をつくるために、DNAが転写されmRNA前駆体になり、そこからイントロンという配列を除いてエキソンをつなぎ合わせる「スプライシング」と呼ばれる過程を経て成熟mRNAが作り出され、それが翻訳されてタンパク質になります。SMN2遺伝子はSMN1遺伝子と配列が若干異なるせいで、スプライシングの際にエキソン7が脱落しやすくなっており、結果として、タンパク質生成物の90%が不安定な機能不全型のSMNタンパクになってしまい、完全長で機能的なSMNタンパクは10%程度に留まることが知られています。