全身型若年性特発性関節炎(SJIA)とは

若年性特発性関節炎(JIA)とは、16歳未満で発症する、原因不明の慢性(6週間以上持続する)関節炎です。

JIAには、大きく分けて全身型JIA(SJIA)と関節型JIA、その他の3つのタイプがあります。

全身型JIAは、関節炎以外に、発熱や発疹などの全身症状があるのが特徴です。

関節型JIAは、関節の痛みや腫れがおもな症状です。

JIA:Juvenile Idiopathic Arthritis
SJIA:Systemic Juvenile Idiopathic Arthritis

SJIAの症状とは

SJIAでは、おもに次のような症状がみられます。

  • 発熱 (2週間以上)
    高熱が続いたり、いったん下がった体温がまた上がったりする、ということを繰り返します。
  • 赤い発疹
    短時間で消えたり移動したりする、盛り上がりのない発疹です。発熱すると発疹の色が濃くなり、熱が下がると薄くなる、という特徴があります。
写真提供:大阪医科大学 小児科 岡本奈美先生
  • 関節の腫れや痛み
    手足など全身の関節が腫れたり、痛んだりします。

この他にも、リンパ節の腫れ、漿膜炎(しょうまくえん:心臓や肺を覆っている膜に炎症が起きて胸痛や腹痛がでます)、肝脾腫(かんぴしゅ:肝臓や脾臓が大きくなっている状態)などの症状がみられることがあります。

SJIAの有病率*は?

*有病率:ある一時点において、その病気にかかっている人の割合
SJIAの有病率は、小児人口10万人あたり約4人と推定されています。1

SJIAの原因は?

SJIAがなぜ起きるのか、その原因(病因)はまだ分かっていません。しかし、SJIAがどのようにして発症するのかについて、詳しい研究が進んできています。
人間の身体には、免疫と呼ばれる、細菌やウイルスなどの病原体と戦うための仕組みが備わっています。SJIAでは、この仕組みが異常に亢進して、全身の炎症(熱、赤み、痛みなどがでる状態。からだの防御反応の一つ)を繰り返すものと考えられています。

炎症を引き起こす物質「サイトカイン」

SJIAで炎症を引き起こす物質として、「サイトカイン」が重要な役割を果たしていることが分かっています。サイトカインとは、身体の細胞がつくるタンパク質で、数多くの種類があります。それらのサイトカインのうち、インターロイキン-1(IL-1)や、インターロイキン-6(IL-6)と呼ばれる種類のサイトカインが、SJIAにおける炎症を引き起こしていることが明らかになっています。

SJIAの主な治療法は?

SJIAの治療に使われる薬

SJIAの治療には、おもに次のような種類の薬が使用されます。

  • ステロイド
  • 非ステロイド抗炎症薬
  • 生物学的製剤

ステロイド

SJIAに対して広く使用されている薬です。SJIAと診断された後、発熱などの炎症症状をおさえるために全身投与します(内服または点滴で使用します)。

SJIAに対して、ステロイドは有効な薬です。しかし、長期間にわたって中等~大量使用すると、骨がもろくなったり(骨粗しょう症)、成長のスピードが遅くなったり、眼の合併症をおこしたりするなど、色々な副作用があらわれます。

このため、症状がおさまってきたら、少しずつ、ステロイドの量を減らしていきます。

非ステロイド抗炎症薬(NSAID)

関節痛などの痛みをおさえるために使用される薬です。NSAIDには、消化管障害(胃の粘膜を傷めるなどの障害)や、腎障害(腎臓の機能に悪影響を及ぼす)などの副作用があります。関節炎がよくなれば減量・中止することもあります。

NSAID:Non-Steroidal Anti Inflammatory Drug

生物学的製剤

SJIAでは、サイトカインと呼ばれる物質が炎症(発熱、関節の腫れや痛み)を引き起こすことがわかっています。このため、サイトカインの働きをおさえるための薬剤が使用されます。これらの薬剤は生物学的製剤と呼ばれ、化学的に合成したものではなく、生物が作る物質を薬として使用するものです。生物学的製剤には、感染症やアレルギー反応などの副作用があります。

SJIAの予後は?

SJIAはいったん症状が改善しても、再び悪化することがありますが、最終的には完治する方の多い疾患です。また、完治しない方であっても、適した治療法を選択することで、症状を抑えてステロイドを減量・中止できたり、関節炎の進行を抑えることが可能になってきています。

SJIAに関連するサイト

あすなろ会
若年性特発性関節炎(JIA)の子どもを持つ親の会です。
http://asunarokai.com/

小児慢性特定疾病情報センター
SJIAを含む小児の慢性疾患について、医療費助成制度などの情報を提供しています。
https://www.shouman.jp/patient/

1. 難病情報センター
SJIAについて、病気や治療法の解説を行っています。
http://www.nanbyou.or.jp/

監修:大阪医科大学 小児科 岡本奈美先生