グローバル責任者のマチャバは、ユニークな経歴を活かし、どのようにノバルティスの医療へのアクセスの取り組みを推進しようとしているのでしょうか。
2017年10月1日、パトリス・マチャバ医学博士(Patrice Matchaba, M.D.)は、ノバルティスを退職するユルゲン・ブロカツキー-ガイガー(Juergen Brokatzky-Geiger)の後任として、ノバルティスの企業責任(CR; Corporate Responsibility)活動の新たなグローバル責任者に就任しました。マチャバ博士は、2000年にノバルティスに入社し、米国を拠点に専門領域の臨床開発責任者を務めてきました。過去17年間にわたり、彼は、グローバル医薬品開発の中で様々な責任ある役職に就き、直近では循環器・代謝領域のグローバル開発責任者を務めていました。今回就任したCRグローバル責任者の役割について、話を聞きました。
医薬品開発のキャリアを経てCRの責任者になろうと思ったのはなぜですか?企業責任に興味を持ったのには何かきっかけがあったのでしょうか?
マチャバ: 17年近くにわたってノバルティスのグローバル医薬品開発のほぼすべての部門で仕事をし、責任者を務めてきました。私は企業責任の熱心な支持者であり、これからは臨床の専門家としての幅広い経験をこの職務に役立てていきたいと思っています。また、私はアフリカ生まれで、ノバルティスに入社する前は南アフリカで医師や研究者として働いていました。ですからこうした地域での問題や課題、さらにノバルティスの企業責任の活動が与えうる影響について直接得た知識を持っていると言えます。
この問題に関心を持つきっかけとなった具体的な体験があれば教えて下さい。
マチャバ:ノバルティスは、先日、心不全治療薬を発売しましたが、これは無力感を抱く経験となりました。この薬は20年ぶりの新しい種類の治療薬であり、発売にあたり(人材にも財務的にも)大きな投資をしました。
しかしながら、こうした努力や投資にもかかわらず、現在のビジネスモデルでは約100万人の心不全患者さんにしかこの薬が届かないことに気づいたのです。世界中には6,000万人近くの患者さんがいるにもかかわらずです。この経験が非常に心に残り、すべての患者さんには無理であったとしても、継続的に、より多くの患者さんが必要なときに、薬を手に入れることができる画期的な医療アクセスモデルを作り上げる必要性があると確信するようになりました。
このことを念頭におきながらCR部門の責任者となったことは、またとない機会だと思っています。ノバルティスは、イノベーションにおける優れた力と資源を結集し、できるだけ多くの人々の命を延ばし、その質を向上させるという使命を実現するチャンスを手にしています。医薬品開発の仕事から転じ、持続可能なグローバル・アクセス・モデルの取り組みに挑戦することは、私にとってかけがえのない見逃せないことでした。
CRの責任者という役割に独自の考え方や経験、アイデアをどのように取り入れていきますか?
マチャバ: 前任者のユルゲン・ブロカツキー-ガイガーとチームが築いたしっかりとした土台に、さらに実績を積み上げていくにあたり、医薬品開発の経験や私がアフリカ出身であるということが大きな価値を生むと考えています。医療アクセスに関する新たな戦略を練り上げる中で、開発途上国の医療インフラや機能におけるギャップについての自身の考えや経験を共有していくことができます。
開発途上国における医療アクセスの課題が、画期的医薬品が手に入らないという単純なものではないという事実をよく知っておく必要があると思っています。むしろ、ヘルスケア製品の供給やその効果を測定する収益構造全体の問題なのです。ノバルティスが日々のビジネスでアクセスに関する戦略をさらに取り込むことを模索しているのはそのためです。ノバルティスは、HIV/エイズやCR部門が担当しているマラリアに対する取り組みでの大きな成功を通して、その影響力を確認しています。
“CR部門の責任者となったことは、またとない機会だと思っています。ノバルティスは、イノベーションにおける優れた力と資源を結集し、世界中のできるだけ多くの患者さんの命を延ばし、その質を向上させるという使命を実現するチャンスを手にしています”
パトリス・マチャバ ノバルティス CRグローバル責任者
ノバルティスが直面するCRの課題は何だと思いますか?
マチャバ: ノバルティスのCRの取り組みは、ユルゲンと彼のチームにより大きく前進しました。今のノバルティスの役割は、この強固な土台の上にさらに実績を積み上げていくことです。先程述べたように、ノバルティスは、医薬品へのアクセスが事業運営に不可欠な要素となるよう取り組んでいきます。
さまざまな疾患の撲滅は今後も取り組むべき課題の一つです。マラリアおよびハンセン病で長く続けているプログラム、なかでもマラリアについては開発中の新薬があり、ノバルティスは、これらの古くからある疾患の撲滅についても考え始める時期に来ています。移植、心不全、がん、乾癬、高血圧症において疾患による負担を軽減し、医療に貢献してきたノバルティスにとって、これは現実的なことだと思っています。
もちろん、世界各地における非伝染性の疾患や慢性疾患のまん延という問題もあります。開発途上国において、これはすでに感染症による問題を上回っています。この問題に対処するために、グローバルアクセスと医薬品開発を統合し、ノバルティスの通常の開発プロセスの一部となるようにしなければなりません。ノバルティスは業界で最も魅力的な開発パイプラインを持つ企業のひとつであり、これにチャレンジできる企業はノバルティス以外にないと確信しています。
どのように仕事をするかというのは、何をするかということと同様に大切です。これはつまり、誠実な企業文化の強化、事業活動による環境負荷の最小化、オープンで透明性の高い事業運営といった、すでに進行中の多くのすばらしい取り組みを続けるということです。このことにより、すべてのステークホルダーや顧客の皆さん、基盤である社会との信頼関係の構築が可能となるのです。