毎年、世界中で1,000万人を超える人が高血圧で亡くなっています。高血圧は、症状がないことから、よく「サイレントキラー」と呼ばれている疾患です。対処しないままにしておくと、心臓疾患、脳卒中、腎不全を引き起こすことがあります。
高血圧の管理率は国によって大きく異なります。たとえば、危険な高血圧を抱える人のうち症状を管理している人の割合は、米国が53%2であるのに比べ、ガーナではわずか4%1にすぎません。
高血圧のような非感染性疾患(NCD)を抱える人の増加は、低所得国と中所得国で特に問題となっています。こうした国々では、多くの医療システムが過剰に拡大し、多くの場合、主に感染性疾患に対処するよう設定されています。
2015年、Novartis Foundationはパートナーと共にガーナの都市近郊地域で高血圧を管理する革新的な取り組みを開始しました。Ghana Health Service、London School of Hygiene & Tropical Medicine、FHI 360と協力した、地域に根ざす高血圧管理プログラム(community-based hypertension management project、以下ComHIP)では、地域の店や会社が血圧測定を実施できるようにすることで、可能な限り早く高血圧の発見、診断、治療を行うための新たなモデルを試しました。
そして、デジタル技術が、このような新しい測定所で血圧測定を実施し、血圧が高かった人と医療従事者を結びつけています。SMSメッセージのおかげで、患者さんは医薬品、食事、運動の治療計画をきちんと守るようになり、最終的には命を救うことにつながりました。
このことは、既存の技術を使ったシンプルなデジタル医療ツールが人々の健康を大きく改善できることを示しています。
ComHIPの結果は、地域に根ざした治療によって高血圧のような慢性疾患にうまく対処できる可能性があることを明らかにしています。たとえば、1年以上の間このプログラムに登録している人を見ると、平均的な高血圧の管理率は36%から71%に上がり、平均して収縮期血圧が12mm Hg、拡張期血圧が7mm Hg下がっています。
ComHIPを利用したことにより、患者さんは病院や診療所に出かけていく必要がなくなり、治療にアクセスしやすくなりました。このおかげで、時間とお金が節約できます。その上、過剰に拡大した医療システムへの負荷も減ります。
ComHIPの結果から、地域に根ざした治療の大きな可能性が示されました。そして、住んでいる場所、働いている場所、買い物をする場所の近くで治療を受けることができるこの方法には、他の国や他のNCDでも再現されれば、何百万人もの命を救える可能性があることを示唆しています。