マラリア制圧への新たな世界的活動の訴え

調査結果は、この疾患の新たな猛威を防ぐためには協調した活動が必要なことを浮き彫りにしました。

Apr 25, 2018

アフリカの保健衛生の専門家は、マラリア対策の大きな進展が逆に油断をもたらしていると警告し、疾患を制圧するために新たな取り組みを訴えています。

世界のマラリアによる死亡率は2000年から2015年にかけて60%以上減少しました。1しかし、調査に参加した専門家は、政府によるさらなる資金援助や国際機関によるそれ以上の効果的な支援がなければ、進展が止まる恐れがあると述べています。彼らは、蚊が殺虫剤に耐性を示し、マラリア原虫が既存の薬に耐性を示しつつあるという証拠を提示しています。

その懸念は、Malaria Futures for Africaという新しい調査の中で強調されています。この調査は、最もマラリアが流行している国々におけるアフリカのオピニオンリーダーの意見を集めることを目的に、初めの試みとして行われたものです。

サハラ以南のアフリカ14カ国の保健相、公務員、マラリアプログラムの責任者、上級研究者、NGO代表68名を対象に調査が行われました。

多くの専門家は、2030年までに35カ国以上においてマラリアを制圧し、世界のマラリアによる死亡率を2015年に対して90%以上減少させるという世界保健機関(WHO)の目標は、資金提供やヘルスケアサービスの大幅な変更なくしては達成されないと確信していると述べています。

「ほとんどの国において、資金の配分は適切ではなく、国家政策の立案あるいは実行が不十分であると考えられています。より良い、より対等なパートナーシップとより多くのリソースの必要性が、ほとんどすべてのページで言及されています」と、研究の共同議長でElimination 8(E8)の大使でもあるリチャード・カムイ博士(Dr. Richard Kamwi)と、ケニアのKEMRI-Wellcome Trustプログラムならびに英国オックスフォード大学のボブ・スノー教授(Professor Bob Snow)も述べています。

続く苦しみ

マラリアとの闘いは著しい進歩を遂げてきたものの、いまだに2分毎に1人の子供がマラリアによって亡くなっています。その大部分は、サハラ以南のアフリカの子供です。 2017年の WHO の世界マラリアレポートは、マラリアとの闘いの進展が行き詰まり、資金調達が絶たれていると警告しています。 さらに、アフリカ経済へのマラリアの推定コストは年間120億米ドル以上に上ります。

ナミビアの状況説明において、ある専門家は、「マラリア発生率の大幅な低下がありましたが、残念なことに、これが油断につながりました。 死亡率は比較的低いままですが、マラリアの懸念すべき再燃をもたらしたのです」と言っています。

ナイジェリアの専門家は、政治的な意思があれば、マラリアを排除することは可能だが、現実的には難しく、それはプログラムがどのように運営されるかに起因するからだと述べています。 「すばらしい計画、政策、文書はありますが、物事をうまく動くようにするための政府のプロセスがほとんど機能していないからです」

目標支出

多くの専門家は、マラリアの流行が下火になったため、そもそも蚊に刺されることを防ぐための蚊帳の使用など基本的な予防対策が脇に追いやられる恐れがあると述べています。 報告書は、人々に予防対策を適切に行わせるためには、社会的および行動的な変化だけでなく、より多くの教育が必要であると主張しています。

専門家は、マラリア治療薬の小児用処方、およびより良い診断ツールへのより広いアクセスの必要性も訴えています。そして新しいマラリア薬が入手可能になるまで、予防と治療に対する既存のアプローチを最大限に活用することが重要であると強調しています。 多くの専門家は、マラリアの予防、診断、治療がどのように提供されるのか、また最大の利益をもたらすよう改善することができるのかの評価に重点を置くよう求めています。

資源が不足していると専門家が考えていて、多くの人が自国政府の支出を増やすよう呼びかけている領域がひとつありました。「マラリアは貧しい人々の病気で、HIV /エイズのようにすべての人々に影響を与えないため、十分な注意が払われていません。HIV /AIDS(よりも多くの人々がマラリアに感染し、影響を受けていますが、マラリアはHIV/AIDSほどの資金援助がありません」とマラウイの専門家は言っています。

専門家は、国際援助機関の支援は、国の優先事項と協働し、長期的に維持されることが不可欠であるとも回答しています。 しかしながら共同研究の議長は、この資金調達源が脅かされていると警告しています。「問題がそれほど深刻ではないように見えるということと、議会に対して説明責任がある援助機関が、約束したよりも進捗が少ないことを目の当たりにしているために、マラリア対策が寄付の一覧から削除される大きな危険があります」

耐性の脅威

多くの専門家は、蚊が次第に殺虫剤に耐性を示すことに懸念を示しています。また、今後15~20年でマラリアの患者さんに対する標準治療であるアルテミシニン併用療法(artemisinin-based combination therapy、以下ACT)に耐性を示す可能性があります。薬剤耐性の初期兆候が見られたアフリカとアジアの間の貿易や渡航の拡大により、薬剤耐性が急速に広がることを恐れる専門家もいました。一方、薬剤耐性はアフリカのみで見られる兆候であると考える専門家もいました。

報告書は、耐性の広がりを追跡するためにはより良い調査が必要であり、現在の殺虫剤や医薬品の代替策の開発にさらに投資しなければならないと結論付けています。 そしてこれを成功させるためには、より大きな協力が不可欠と専門家は述べて言います。およそ4分の1の回答者が、抗マラリア薬や殺虫剤への耐性に対処するための世界的あるいは国家規模の計画の欠如が、この疾患と闘う上で大きな障害であると主張しています。

この調査を委託し、資金提供を行ったノバルティスのソーシャルビジネスの責任者、ハラルド・ヌーサ(Harald Nusser)は、次のように述べています。「この調査で、これまでの大きな成果を持続させ、マラリア根絶の最終目標を掲げる世界的な勢いを維持するために、 公的および民間機関が一丸となって取り組まなければいけないことが明らかになりました。私たちはマラリアに対する多くの闘いに勝ちましたが、まだ根絶には勝利していません」

ノバルティスのマラリアに対する取り組み

アクセス、治療、研究開発、キャパシティ・ビルディング(途上国に対する技術支援)を中心とするノバルティスのマラリアに対する取り組みは、ヘルスケア企業として最大の医薬品へのアクセスプログラムのひとつです。

さらに詳しく
  1. World Health Organization Malaria Fact Sheet: World Malaria Report 2015

本文は www.novartis.com から翻訳、編集したものです。
African experts call for renewed global drive to beat malaria
https://www.novartis.com/stories/access-healthcare/african-experts-call-renewed-global-drive-beat-malaria