生産技術:患者さんの命と健康を守る最後の砦。細部まで徹底し、誠実さを大切にしたい。
品質保証部 品質管理試験グループ
生物科学専攻 修士了 2015年入社
仮説を立て検証していく科学の面白さを感じる
篠山工場における品質保証部は、工場から出荷する製品の品質に関して、最後の番人の役割を果たしています。私の所属する品質管理試験グループは、日本薬局方の定めに従って、品質を保証するための各種試験を計画・実施し、科学的に品質を保証しています。新製品を扱う場合、海外で先行して販売しているものについては、既に試験方法が確立されていますが、日本で試験をすると海外と同じデータが出るとは限りません。例えば吸湿しやすい性質の薬剤だと、気候の違いからデータが異なってしまうことがあるのです。こうした問題をクリアするために、私たちが試験を行う部屋の環境や手技を工夫しています。
この仕事のやりがいは、患者さんのために役立つ新しい医薬品を世に出すことに貢献できることです。品質に問題がないことを確認し、問題があるものを出荷しないことによって、患者さんの命や健康を守る最後の砦となっていることに自負を持っています。また、試験結果が予想と異なることがあった場合に、その原因を探索していくのも面白いところです。なかなか原因がわからず、海外にサンプルを送って同じ条件で試験をしてもらうなど苦労することもありますが、仮説を立てそれを検証していく過程は、科学の面白さを感じるところでもあります。
入社3年目で工場を代表してシンガポールヘ
私は高校生の時に母をがんで亡くしました。その時に母の服用した薬があまり効かなかったこともあり、薬に対して否定的な気持ちを抱いていました。ところが、大学生になってから、数カ月に1回、偏頭痛に襲われ激しい痛みを感じるようになりました。そんなある日、医師に処方されて服用した薬が非常によく効いて、痛みをきれいに忘れるという経験をしました。薬に対する認識が少し変わった瞬間です。その後、母の疾患について調べてみたところ、数年のうちに薬も大きく進化していることがわかり、それまでとは逆に薬に期待する気持ちが芽生えました。製薬会社で働くことを希望するようになったのは、こうした体験があったからです。ノバルティスに興味を持ったのは、どうせ働くなら規模の大きなところがいいという考えからでした。
2017年3月にアジア地区の各拠点から担当者が集まる会議がシンガポールで開かれ、私が篠山工場を代表して参加することになりました。私たちの試験方法を定めている薬局方は国ごとに異なります。ノバルティスは国境をまたいで活動しているため、一つの国で薬局方に変更があった場合、他国にも影響を及ぼすことになります。こうした変更情報をスムーズに共有するためのネットワークを構築することになり、そのために会議が開かれたのです。アジア6カ国から参加者が集い、コミュニケーションは英語でしたが、英語の訛りが強い国の人もいたので、ジェスチャーを駆使して意思疎通を図る場面もありました。グローバル企業であることを実感できた喜びとともに、まだ入社3年目の人間を工場の代表として送り出してくれたことに驚きました。言葉だけでなく、本当に若手に仕事を任せる風土がある会社だと実感しました。
判断のスピードを上げ、効率的に仕事をしたい
品質保証における試験は、非常に細かいデータを扱うものが多いため、緻密に物事を考え、細部にまで神経を張り巡らせることのできる人が向いていると思います。また、私たちが扱うデータは患者さんの命や健康に直結するものであり、仕事に対して誠実であることも重要な資質です。私は大学院で生物の行動を扱う実験をしていましたが、必ずしも論理で解明できないことが多く、データの扱いもそこまで緻密ではありませんでした。そのため、当初は良い意味でギャップを感じました。日々の仕事の場面では、データと向き合い続けるためにともすれば忘れがちになる、患者さんのためにこの試験を計画したり実施したりしているのだという意識を持つように心がけています。
私はまだ最初から最後まで関わった新製品を世の中に送り出した経験がありません。まずはその経験を積んだうえで、次のステップのことを考えたいと思います。品質保証の仕事は細部まで徹底する性質があるため、つい目の前のことだけに集中しがちなのですが、キャリアを考えると、俯瞰して物事を捉えることができるようにならなければなりません。当面の課題は、判断のスピードを上げること。いろんなことを先輩に相談している時間が長いので、もっと効率的に仕事ができるようになりたいと考えています。