プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:レオ・リー、以下「ノバルティス ファーマ」)が発売するヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤「ゾレア®」(一般名:オマリズマブ(遺伝子組換え))は、「日本における重症花粉症による経済損失を約3分の1程度に軽減可能」とする研究結果をドイツのWifOR Instituteが発表しました。本研究は「重症スギ花粉症患者の仕事の生産性に対するオマリズマブの影響」と題した、治療がおよぼす社会的インパクトを調査分析したもので、ジャーナル・オブ・メディカル・エコノミクス(Journal of Medical Economics)2022年2月版に掲載されました。
直近の報告によると、日本人の38.8%1はスギ花粉症に罹患しており、2.5人に1人がスギ花粉に悩まされています。重症化する例も多く、仕事や勉強に支障を来すことも少なくありません。近年、何らかの疾患を抱えながら出勤し、業務の生産性が低下する状態となるプレゼンティーズムが問題になっていますが、花粉症はその原因の一つとして注目されています。罹患者も多く、日本経済全体におよぼす影響も甚大です。症状を抑えることで影響も小さくはなりますが、弊社が行った直近の調査では、花粉症を自覚する人のうち「前年より治療に力を入れたい」という人は10.7%と前年の23.9%に比べてさらに下がっており、新型コロナ禍で対処の意識も後退しています2。
今回の研究は、季節性アレルギー性鼻炎に対して「ゾレア」が経済損失の軽減に寄与するかを検証するために行われました。この研究では20歳から65歳のスギ花粉症患者のうち既存治療で効果不十分な重症または最重症の患者を対象に行われました。
その結果「ゾレア」の使用により、花粉飛散時期3週間の労働障害時間のうち、約3分の1に相当する3,660万時間分の有償および無償の労働障害を軽減できる可能性が示されました。WifOR InstituteのCEOで医療経済部門の責任者のデニス・オストワルド博士によると、重症スギ花粉症の症状が発現する3週間の有償および無償の労働生産性低下による負担を、患者一人当たり24.58時間軽減でき、これは金額に換算すると489.71ドルに相当します。この仮想対象患者集団全体でみると、年間2,192万の有給ならびに1,463万の無給の労働時間、金額にして728,300,000ドル(参考:日本円764.7億円)の経済損失が回避されることになります。 この結果は、労働生産性の観点で「ゾレア」が患者さんや社会にもたらす可能性のある経済的な影響を示したものといえます。
※ 研究では1円=0.0095ドル(1ドル105円)として換算し、全てドルで算出しております。
社会的インパクトアプローチについて
社会的インパクトとは、医療のイノベーションによる社会的影響を、医療によって避けられる可能性のある仕事に関する生産性損失を定量化し、金額に換算するアプローチです。本研究では、「ゾレア」により重症花粉症の患者の労働生産性損失と経済損失が改善される可能性が示唆されました。また、有給労働に加えて無給労働の社会的な価値の可能性も示唆されます。今回のWifOR Instituteの研究は、このような医療イノベーションの社会に対する便益を総合的に分析したものです。
方法
「ゾレア」による社会的影響は、日本で実施された重症および最重症のスギ花粉症症状を有する患者を組み入れたオマリズマブの臨床試験において、WPAI-AS(Work Productivity and Activity Impairment Allergy Specific)質問票を用いて得られた3週間のスタティック・コホート・モデルより推定されています。この社会的影響は、雇用や時間利用に関する日本の公式統計を用いて定量化されました。有給と無給それぞれの労働活動を金額換算するために人的資本アプローチと代理人的資本アプローチを採用したうえで、構造的不確実性を検討するため、感度解析が実施されています。
WifOR Instituteについて
WifOR Instituteは、独立した経済研究機関として2009年に設立されました。ドイツ、ギリシャ、アイルランド、ラテンアメリカ、米国の5ヵ国に拠点を持ち、主な研究分野は医療経済、インパクト分析、国際社会政策です。WifOR Instituteの重要な研究テーマにはインパクト評価、健康、持続可能性、グローバル・バリュー・チェーン、デジタル化、教育、雇用が含まれます。実証的分析に焦点を当て、マクロ経済データをビジネス文脈に変換する試みも行っています。
「ゾレア」(一般名:オマリズマブ)について
「ゾレア」は、国内において、成人の気管支喘息治療剤として2009年1月(150 mg凍結乾燥製剤)および2012年9月(75 mg凍結乾燥製剤)に、小児の気管支喘息治療剤として2013年8月に、特発性の慢性蕁麻疹治療剤として2017年3月に、また季節性アレルギー性鼻炎治療剤として2019年12月に承認を取得しています。また、2019年3月に凍結乾燥製剤より簡便に投与できるプレフィルドシリンジ製剤である「ゾレア皮下注75 mgシリンジ、150 mg シリンジ」の製造販売承認を取得しました。「ゾレア」は、ノバルティスとジェネンテック社で共同開発され、2021年6月現在、世界90ヵ国以上で気管支喘息の治療薬として、また、世界80ヵ国以上で慢性特発性蕁麻疹の治療薬として承認されています。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く医薬品のグローバルリーディングカンパニー、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。ノバルティスは世界で約11万人の社員を擁しており、8億人以上の患者さんに製品が届けられています。ノバルティスに関する詳細はホームページをご覧ください。
以上
参考文献
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻アレルギー診療ガイドライン ― 通年性鼻炎と花粉症 ― 2020年版(改訂第9版) 第2章 疫学、 p.9、(株)ライフ・サイエンス、2020
- ノバルティスファーマ「新型コロナ禍における花粉症と外出への意識・実態調査」