プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(代表取締役社長:レオ・リー、以下「ノバルティス ファーマ」)は、本日、「前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病」に対して、新作用機序であるSTAMP阻害作用を有するセムブリックス®錠20 mg、同40 mg(一般名:アシミニブ塩酸塩)(以下、「セムブリックス」)の製造販売承認を国内で初めて取得しました。
慢性骨髄性白血病(以下、CML)は、約20年前に登場した分子標的薬であるチロシンキナーゼ阻害剤 (以下、TKI)により治療成績が格段に向上し、長期の生存が難しい疾患から通院でコントロールできる慢性疾患に移行したと言われています1。 一方で、現在のCML治療に抵抗性、または不耐容となる患者も多く、そうした患者に対しては、治療選択肢が限られるという課題があります2-9。
「セムブリックス」は、ABLミリストイルポケットを特異的に標的とするSTAMP阻害作用により、従来のTKIとは異なる作用機序を有する新しいCML治療薬です11-20,30。今回の承認で、これまでのTKI治療に抵抗性または不耐容であった患者に新しい治療選択肢を提供できるようになります。
「セムブリックス」は、2剤以上のTKIに抵抗性または不耐容であった患者を対象とした国際共同第III相検証試験(ASCEMBL試験)の結果に基づき承認されました10-14。
- 主要評価項目である24週時点の分子遺伝学的大奏効(MMR)率では、「セムブリックス」はボシュリフ(第二世代TKI)と比較してほぼ2倍(「セムブリックス」群25% vs. ボシュリフ群13%)であり、「セムブリックス」のボシュリフに対する優越性が検証され、主要目的を達成しました[共通リスク差12.2%,95%信頼区間 2.19-22.3; 両側P値=0.029])。
- 副作用により治療を中止した患者の割合が、「セムブリックス」群(n=156)はボシュリフ群(n=76)の3分の1未満でした(「セムブリックス」群7% vs. ボシュリフ群25%、48週時点)。
- 最も多く認められた(発現率20%以上の)副作用は、「セムブリックス」群では血小板減少症(29.5%)および好中球減少症(23.1%)、ボスチニブ群では下痢(71.1%)、悪心(46.1%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の増加(28.9%)、嘔吐(26.3%)、発疹(23.7%)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の増加(21.1%)および好中球減少症(21.1%)でした(48週時点)。
- 有効性および安全性について、全体集団と日本人集団で同様の傾向が示されました。
「セムブリックス」の承認について、ノバルティス オンコロジー事業本部 血液腫瘍領域事業部 執行役員 事業部長の齋藤昌信 は次のように述べています。
「CMLの治療は大きな進化を遂げていますが、既存治療では効果が十分に得られていない、もしくは日常生活に困難を生じる副作用に悩む患者さんもいらっしゃいます。ノバルティスはこの現状を真剣に受け止め、解決法を模索してきました。今回の承認で、従来のTKIに抵抗性、または不耐容のCML患者さんに、新しい作用機序を持つ治療選択肢を提供することができることは、20年以上にわたってCML治療の変革に取り組んできた私たちにとりましても大変嬉しいことです。ノバルティスは、引き続きこの疾患とともに生きる患者さんの人生に貢献することを目標に、医薬の未来を描いていきます。」
「セムブリックス」(一般名:アシミニブ塩酸塩)について
「セムブリックス」は、ABLミリストイルポケットを特異的に標的として作用するCML治療薬です11。この新規作用機序は、学術論文ではSTAMP阻害作用としても知られ、2剤以上のTKI治療歴のあるCML患者の抵抗性に対処し、白血病細胞の過剰産生とも関連するBCR-ABL1遺伝子の変異を克服できる可能性があります11-20。「セムブリックス」は、オフターゲット効果は限定的であったことも前臨床試験から示されています30。
ノバルティスは、複数の国や地域の規制当局に対して「セムブリックス」の承認申請を行っています。
「セムブリックス」は、現時点で利用可能なTKI治療に抵抗性、または不耐容である患者にとって重要な前進の一つであり、現在、CML-CPの複数の治療ラインおよび、小児への適用について検討されています11-27。特に、第III相ASC4FIRST試験(NCT04971226)は「セムブリックス」を一次治療として評価するもので、現在は被験者募集段階にあります22。
「セムブリックス」は、米国で2021年11月、2剤以上のTKIによる治療歴のあるフィラデルフィア染色体陽性慢性骨髄性白血病 (以下、Ph+ CML-CP)の成人患者(40mg 1日2回、80mg1日1回)、およびT315I変異を有するPh+ CML-CPの成人患者(200mg 1日2回)の治療を適応症として承認を取得しています*。
* 2剤以上のTKIによる治療歴のあるPh+CML-CPに対する80mg 1日1回投与、およびT315I変異を有するPh+ CML-CPに対する200 mg 1日2回投与ついては、日本では未承認。
国際共同第III相検証試験(ASCEMBL試験)について
ASCEMBL試験は、2剤以上のTKIによる前治療歴があり、直近のTKIによる治療に抵抗性、または不耐容なCML-CP患者*を対象に、「セムブリックス」の有効性および安全性をボシュリフと比較することを目的とした多施設共同、ランダム化、非盲検、実薬対照、国際共同第III相試験です。主要評価項目は24週時点のMMR率、主要な副次評価項目は96週時点のMMR率です。計233名(日本人16名を含む)の患者が組入れられ2:1の比で「セムブリックス」群(「セムブリックス」40mg を1日2回(空腹時)経口投与、157名、うち日本人13名)、またはボシュリフ群(ボシュリフ500mg 1日1回(食後)経口投与、76名、うち日本人3名)にランダム化されました。
慢性骨髄性白血病(CML)について
CMLは国内外で年間約10万人に1-2人の頻度で発症する「血液のがん」で、何らかの原因によりがん化した血液細胞(白血病細胞)が骨髄の中で増殖していく病気です28。
2020年の国内のCML罹患数は約2,000人、10年有病数は約12,000人です29。
CMLはおよそ5年かけて白血病細胞が骨髄と血液の中でゆっくりと増える「慢性期」を経て、悪性化した細胞の増加を伴う「移行期」「急性期」と進行していきます28。移行期、急性期では、数カ月のうちに血液細胞の機能が失われて症状が急速に悪化する28ため、CMLの治療では可能な限り慢性期の早い段階で白血病細胞の増殖を抑えて、進行を防ぐことが大切です。
ノバルティスのCMLに対する取り組みについて
ノバルティスは、慢性骨髄性白血病(CML)の治療成績向上を目指し、20年以上研究開発に取り組んでいます。CMLは、多くの患者さんにとって長期の生存が難しい白血病から慢性疾患に変わりましたが、ノバルティスの歩みは続きます。CMLの治療法を追求し、多くの患者さんが直面しうる治療抵抗性や不耐容などの課題解決に挑戦します。また、ノバルティスは今後も、患者さんにとって持続可能な医療へアクセスできるよう尽力し、グローバルなCMLコミュニティと連携しながら、CML治療の未来を描いてまいります。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く医薬品のグローバルリーディングカンパニー、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。ノバルティスは世界で約11万人の社員を擁しており、8億人以上の患者さんに製品が届けられています。ノバルティスに関する詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.co.jp
以上
参考文献
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<参考資料> 「セムブリックス錠®」の製品概要
製品名: セムブリックス錠®(20 mg、同40 mg)
一般名: アシミニブ塩酸塩
効能又は効果 前治療薬に抵抗性又は不耐容の慢性骨髄性白血病
用法及び用量
通常、成人にはアシミニブとして1 回40 mg を1 日2 回、空腹時に経口投与する。なお、患者の状態により適宜減量する。
承認取得日: 2022年3月28日
製造販売: ノバルティス ファーマ株式会社
*効能又は効果に関連する注意並びに用法及び用量に関連する注意は、添付文書をご覧下さい
ノバルティス ファーマ、慢性骨髄性白血病薬として国内初、新作用機序 STAMP阻害作用を有する「セムブリックス®錠」製造販売承認取得(PDF 0.4 MB)