プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2022年6 月3日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。本剤について日本国内では未承認です。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- 第III相SOLAR-1試験のバイオマーカー解析により、アルペシリブとフルベストラントの併用療法は、ESR1遺伝子変異およびCDK4/6阻害剤耐性に関与する遺伝子の存在にかかわらず、臨床的ベネフィットを提示1
- 過去にフルベストラント治療歴を有する場合でも、アルペシリブとフルベストラント併用による有効性が持続。リアルワールドエビデンスのレトロスペクティブ解析で示されたとおり、原因遺伝子としてPIK3CA遺伝子変異を標的とすることの重要性が明確化2
- アルペシリブは、本疾患の主要な原因遺伝子であるPIK3CA遺伝子変異を有するHR陽性/HER2陰性転移性乳がんに対して承認されている唯一の治療薬3-5
2022年6月3日、スイス・バーゼル発—本日、ノバルティスは、内分泌療法中または内分泌療法後に進行したホルモン受容体陽性、ヒト上皮増殖因子受容体2陰性(HR+/HER2-)の転移性・進行性乳がん患者において、PIK3CA遺伝子変異を有する腫瘍の異なる遺伝子変異プロファイルは、アルペリシブとフルベストラント併用の治療ベネフィットに影響を及ぼさないというレトロスペクティブなバイオマーカー解析結果を発表しました。2022年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会(抄録#1006)で口頭発表された第III相SOLAR-1試験のレトロスペクティブ解析では、ESR1やCDK4/6阻害薬耐性に関与する遺伝子を含むほとんどのバイオマーカーでの遺伝子変異に関係なく、アルペシリブとフルベストラント併用による臨床的ベネフィットが維持されていることが示されました1。
Mass General Cancer Center(ボストン)のTermeer Center for Target TherapiesのディレクターであるDejan Juric医学博士は次のように述べています。「様々な遺伝子変異を有するHR+/HER2-進行性乳がん腫瘍を対象にアルペリシブとフルベストラントを評価した本解析により、これらの腫瘍においてアルペリシブを用いて主要な原因遺伝子であるPIK3CAを選択的に標的とする重要性が確認されました。」
ノバルティスのUS OncologyのExecutive Vice PresidentであるReshema Kemps-Polancoは「PIK3CA遺伝子変異はHR+/HER2-サブタイプの患者の約40%に影響を及ぼし、転移性乳がんの原因遺伝子であることが知られており、また内分泌療法抵抗性および全体的な予後不良と関連しています。そのため、PIK3CA遺伝子変異を有する患者には、あらかじめ医師がASCOおよび全米総合がんセンターネットワーク(NCCN)ガイドラインに沿って検査しアルペシリブを用いて治療することが極めて重要です。」と語っています。
ASCOでのSOLAR-1バイオマーカーのレトロスペクティブ解析の注目点
- ESR1遺伝子変異を有する患者は、アルペシリブとフルベストラントの併用投与で無増悪生存期間(中央値)(mPFS)12.0カ月を達成したのに対し、フルベストラント単独投与では6.5カ月でした1。
- CDK4/6阻害薬に対する耐性との関連が認められているFGFR1およびFGFR2遺伝子変異を有する患者においても、アルペシリブとフルベストラントの併用投与(mPFSはそれぞれ12.7カ月および9.6カ月)では、フルベストラント単独投与(mPFSはそれぞれ3.8カ月および2.8カ月)と比較してベネフィットが認められました1。
- アルペシリブとフルベストラントの併用で認められたベネフィットは、TP53、CCND1、MAP3K1およびARID1Aを含むその他の遺伝子変異、またMAPK経路の遺伝子、RB11などのCDK4/6阻害薬耐性に関与する遺伝子とは無関係でした。
リアルワールドエビデンスも、PIK3CA遺伝子変異を有する腫瘍におけるアルペシリブの有効性を支持
リアルワールドのレトロスペクティブ解析(抄録番号1055)では、PIK3CA遺伝子変異を有するHR+/HER2-の進行性・転移性乳がん患者157例において、フルベストラントによる前治療歴を有する場合でもアルペシリブとフルベストラントの併用投与後の臨床ベネフィットが示されたことから、PIK3CA遺伝子変異が依存度の高い腫瘍の原因遺伝子であることが確認されました2。本解析において、フルベストラントによる前治療には、CDK4/6阻害薬とフルベストラントの併用投与(74.5%)、フルベストラント単剤投与(33.8%)、および CDK4/6阻害剤以外の薬剤 とフルベストラントの併用投与(21.0%)が含まれました2。
PIK3CA遺伝子変異乳がんについて
全世界で毎年推定361,826人が転移性乳がんと診断されており、HR+/HER2-サブタイプの患者の約40%は、予後不良と関連するPIK3CA遺伝子変異を有するがんを有しています6-7。
アルペリシブについて
アルペシリブは、内分泌療法中または内分泌療法後に進行したPIK3CA遺伝子変異陽性を有するHR+/HER2-、進行性乳がんの閉経後女性および男性の治療を目的に、フルベストラントとの併用療法として開発されたキナーゼ阻害剤です3。米国を含む70カ国以上で承認されています6。欧州の加盟国では、アルペシリブとフルベストラントの併用療法は、内分泌療法のみでの疾患進行した後の治療薬として承認されています8*。
*アルぺリシブはいずれの適応に関しても日本国内では未承認です。
ノバルティスは、アルペシリブの追加試験によって、がん治療の開拓に取り組んでいます。EPIK-B5試験は、SOLAR-1試験を補完するため、CDK4/6阻害薬およびアロマターゼ阻害薬による治療後に、アルペシリブとフルベストラントを併用する大規模な第III相臨床試験として実施されています9。また、ノバルティスは現在、 EPIK-B3(第III相試験)においてトリプルネガティブ乳がん(TNBC)、EPIK-B2(第III相試験)においてHER2+転移・再発乳がん、EPIK-O第III相臨床試験において卵巣がんに対するアルペシリブの可能性を検討しています10-12。
日本国内においては、PIK3CA遺伝子変異陽性を有するHR+/HER2-、進行性乳がんの閉経後女性および男性を対象としたEPIK-B6試験を実施中です。
転移・再発乳がんにおけるノバルティスの取り組みについて
ノバルティスは、優れた科学、協働、患者さんのケアへの情熱を元に、乳がん治療に取り組んでいます。大胆なアプローチで研究に臨み、臨床試験の対象からはしばしば外れてしまう患者集団を組み入れ、疾患の進行に関与する可能性のある新たな経路や遺伝子変異を特定するとともに、患者さんの生活の質を維持するだけでなく、向上に貢献してきました。これまでも、これからも、私たちは、転移・再発乳がんと診断された患者さんの生活を改善し、生存期間の延長に寄与する治療提供に取り組んでいきます。アルペシリブの処方情報全文(www.Piqray.com)を参照してください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者に届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は140カ国以上におよびます。
詳細はホームページをご覧ください。 https://www.novartis.com
以上
ノバルティス、PIK3CA遺伝子変異を有するHR陽性/HER2陰性転移性乳がん患者において主要なバイオマーカーでのアルペリシブの有効性を示す(PDF 328KB)
参考文献
- Juric D, Rugo HS, Reising A, et.al. Alpelisib (ALT) + fulvestrant (FUL) in patients (pts) with hormone receptor-positive (HR+), human epidermal growth factor receptor 2-negative (HER2-) advanced breast cancer (ABC): Biomarker (BM) analyses by next-generation sequencing (NGS) from the SOLAR-1 study. 2022 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meeting. Abstract #1006.
- O’Shaughnessy J, Wöckel A, Pistilli B, et.al. Clincal outcomes with alpelisib (ALP) plus fulvestrant (FUL) after prior treatment (tx) with FUL in patients (pts) with advanced breast cancer (AMBC): a real-world (RW) analysis. 2022 American Society of Clinical Oncology (ASCO) Annual Meeting. Abstract #1055.
- Piqray (alpelisib) Prescribing Information. East Hanover, New Jersey, USA: Novartis Pharmaceuticals Corporation.
- The Cancer Genome Atlas Network. Comprehensive molecular portraits of human breast tumours. Nature. 2012;490(7418):61-70.
- Mosele F, Stefanovska B, Lusque A, et al. Outcome and molecular landscape of patients with PIK3CA-mutated metastatic breast cancer. Ann Oncol. 2020;31(3):377-386.
- Gheorghe D_BC Decision Resources_1-338_ 2017 (Digital Asset ID: 815601; Tag: 1004601/1235506).
- Globocan 2020 (WHO), Cancer Today: Estimated number of new cases in 2020, worldwide, females, all ages_2020.
- Novartis Data on File. Novartis Pharmaceuticals Corp: 2021.
- Novartis Pharmaceuticals. Study to Assess the Efficacy and Safety of Alpelisib Plus Fulvestrant in Participants With HR-postitive (HR+), HER2-negative, Advanced Breast Cancer After Treatment With a CDK4/6 Inhibitor and an Aromatase Inhibitor: EPIK-B5 (October 27, 2021- November 27, 2026). Identifier: NCT05038735. https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT05038735.
- Novartis Pharmaceuticals. Study Assessing the Efficacy and Safety of Alpelisib + Nab-paclitaxel in Subjects With Advanced TNBC Who Carry Either a PIK3CA Mutation or Have PTEN Loss: EPIK-B3 (June 8, 2020-January 9, 2026). Identifier: NCT04251533. https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04251533.
- Novartis Pharmaceuticals. EPIK-B2: A Two Part, Phase III, Multicenter, Randomized (1:1), Double-blind, Placebo-controlled Study to Assess the Efficacy and Safety of Alpelisib (BYL719) in Combination With Trastuzumab and Pertuzumab as Maintenance Therapy in Patients With HER2-positive Advanced Breast Cancer With a PIK3CA Mutation. Identifier: NCT04208178. https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04208178.
- Novartis Pharmaceuticals. Alpelisib Plus Olaparib in Platinum-resistant/Refractory, High-grade Serous Ovarian Cancer, With no Germline BRCA Mutation Detected: EPIK-O (July 2, 2021-January 31, 2025). Identifier: NCT04729387. https://www.clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04729387.