プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2022年6月12日(現地時間)に発表したプレスリリースを日本語に翻訳・要約したもので、報道関係者の皆様に対する参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については英語が優先されます。英語版はhttps://www.novartis.comをご参照ください。
- ELIANA試験の最終解析において、CAR-T細胞療法「キムリア®」の投与を受けた再発または難治性(r/r)のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)患者の55%が5年を超えて生存1
- 投与後3カ月以内に寛解が得られた患者の44%は、5年経過時点でも寛解を維持しており、「キムリア®」の単回投与による長期のベネフィットと治癒の可能性を示唆1
- 安全性プロファイルはこれまでに報告された結果と一致していることに加え、複数の前治療を受けた患者でも遅発性の有害事象なし1
- これらの長期データ、最近の規制当局によるr/rの濾胞性リンパ腫に対する「キムリア®」の承認およびT-ChargeTMプラットフォームの開発を通して、ノバルティスは今後も革新的なCAR-T細胞療法の供給に貢献
2022年6月12日、スイス・バーゼル発—ノバルティスは本日、再発または難治性(r/r)のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(ALL)の小児および若年成人患者を対象とした「キムリア®」(一般名:チサゲンレクルユーセル、以下「キムリア」)のピボタルELIANA臨床試験から得られた長期追跡結果(最長生存追跡調査期間5.9年)を発表しました。ELIANA試験で「キムリア」の投与を受けた患者79名において、5年全生存(OS)率は55%(95% 信頼区間[CI]、43-66)でした。また、投与後3カ月以内に寛解が得られた患者(n=65)の無イベント生存(EFS)期間の中央値は43.8カ月でした。これらの所見は、これまで治療選択肢が限られていたr/r ALL患者に利用可能な唯一のCAR-T細胞療法である「キムリア」による治癒の可能性を示しています。これらのデータは、2022年の欧州血液学会(EHA)ハイブリッド会議(抄録#S112)で口頭発表されました1。
フィラデルフィア小児病院(CHOP)Susan S. and Stephen P. Kelly Center for Cancer Immunotherapyのセンター長および細胞療法・移植部門の部門長を務めるStephan Grupp氏(MD,PhD)は「これらのデータは、5年後の再発が稀だという点で、再発または難治性のB細胞性ALLの小児や若年成人、そのご家族にとって、大きな希望を与える瞬間となりました。」と述べました。「5年ほど前に『キムリア』が承認されるまで、10%未満の5年生存率であった患者さんに真のゲームチェンジャーとなる選択肢を提供することができるようになりました。」と続けました。
ELIANA試験の長期追跡調査では、「キムリア」がr/rのB細胞性ALLの小児および若年成人患者に対するがん治療を変革する可能性が示され、この患者集団において転帰が著しく改善し、持続的な効果と一貫した安全性プロファイルが認められました1。
- 患者の82%が寛解(投与後3カ月以内の完全寛解[CR]または不十分な血液学的回復を伴うCRのいずれか)を達成しました(95% CI、72-90)
- 寛解が得られた患者の5年無再発生存(RFS)率は44%(95% CI、31-56)で、RFS期間の中央値は43カ月でした
- 長期追跡中に新規または予測できない有害事象は報告されませんでした
ノバルティスのExecutive Vice Presidentであり、Oncology & Hematology Development のGlobal Head であるJeff Legosは次のように述べています。「ノバルティスは患者さんに治癒をもたらすことを最終目標として取り組んでいます。B細胞性ALLの治療を受けた小児や若年成人における約6年間の追跡データは、『キムリア』の単回投与の治癒の可能性について最も強力なエビデンスを示しています。今回の結果により、私達は、がん治療において真に革新的でパラダイムシフトを進める治療薬としてのCAR-T細胞療法に対する自信を深めました。ノバルティスは、がん治療の未来を描くため、次世代プラットフォームを用いたCAR-T細胞療法の開発に継続して貢献していきます。」
2022年EHA会議で発表されたノバルティスCAR-Tプログラムに関する追加の更新情報には、r/rのびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の成人患者に対するYTB323およびr/rの多発性骨髄腫の成人患者に対するPHE885(ノバルティスT-ChargeTMプラットフォームを用いて開発された最初のノバルティスCAR-T細胞療法)のヒトに初めて投与する用量漸増試験においてより多くの患者およびより長期の追跡調査から得られた新規データが含まれます2,3,4。これらのデータの詳細およびCAR-T細胞療法による癌治療のイメージ変革への当社の継続的なコミットメントについては、https://www.hcp.novartis.com/virtual-congress/eha-2022/をご覧ください。
「キムリア」®について
「キムリア」は、米国食品医薬品局(FDA)に承認された初めてのCAR-T細胞療法です。「キムリア」は、がんを治療するために患者の免疫系を強化するようデザインされた単回投与の治療法です。「キムリア」は現在、r/rの小児および若年成人(25歳まで)急性リンパ芽球性白血病(ALL)、r/rの成人びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)およびr/rの成人濾胞性リンパ腫(FL)の治療薬として承認されています1*。
*日本国内ではFLの適応は未承認です。
ELIANA試験について
ELIANA試験は、米国、カナダ、オーストラリア、日本、EU(オーストリア、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、ノルウェー、スペインなど)の11カ国25施設で検討した最初の小児対象国際共同CAR-T細胞療法登録試験です。ELIANA試験は、原発性難治性、化学療法抵抗性、同種造血幹細胞移植(SCT)後に再発またはSCT不適格のr/rのB細胞性ALLの小児および若年成人患者を対象に「キムリア」の有効性と安全性を検討する非盲検、多施設共同、単群、国際共同第II相試験でした。主要評価項目は、最良総合効果としてCRまたは血球数回復が不完全な完全寛解(CRi)が3カ月以内に達成され、28日以上持続することと定義される全寛解率(ORR)でした。副次評価項目は、微小残存病変(MRD)検出不能のCR/CRi、寛解期間、無イベント生存期間、全生存期間、細胞動態および安全性などでした5。
T-Charge™について
T-Chargeは、ノバルティス・バイオ・メディカル研究所(NIBR)で開発された、ノバルティスのパイプラインにおいて様々な新規治験用CAR-T細胞療法の土台となる次世代CAR-Tプラットフォームです。T-Chargeプラットフォームを実行することで、当社はCAR-T細胞療法を大幅に改革して、より優れていてより持続的な効果、長期転帰の改善および重度の有害事象のリスク低減を高い確率で患者に提供できる可能性がある新規製品を導入することを目指しています。T-Chargeプラットフォームでは、その治療可能性と密接な関係がある重要なT細胞特性であるT細胞の幹細胞性(T細胞が自己再生および成熟する能力)が失われないため、増殖能が高く、疲弊したT細胞が少ない製品が得られます。T-Chargeでは、CAR-T細胞の増殖は主に患者の体内(in-vivo)で起こるため、体外(ex-vivo)で長時間培養する必要がなくなります。重要な工程効率を実行するT-Chargeプラットフォームは、簡素化された工程と効率化された品質管理によって、従来のCAR-Tよりも迅速かつ信頼性の高いものとなります。ノバルティスT-Chargeプラットフォームを使用して、YTB323*およびPHE885*を含む複数のCAR-T療法の開発が進められています。
*日本国内での開発は未定です。
細胞・遺伝子治療に対するノバルティスの取り組みについて
ノバルティスでは、4つのがん治療プラットフォーム(放射性リガンド療法、標的療法、免疫療法、および細胞・遺伝子治療)を独自の戦略として注力しています。この一環として、より多くの患者さんががんから解放された状態で生活できるように、細胞療法による治癒を目指しています。私たちは引き続き、時代に即したイノベーションをさらに前進させるために、科学を開拓し、製造とサプライチェーンのプロセスに投資していきます。
ノバルティスは世界で最初にCAR-Tの研究に大規模な投資を行い、世界的規模でCAR-T治験を開始した製薬会社です。ペンシルベニア大学ペレルマン医学部と共同で開発し、世界で初めて承認されたCAR-T細胞療法の「キムリア」は、CAR-T細胞療法に対するノバルティスの取り組みの基盤です。
ノバルティスは、「キムリア」をひとりでも多くの患者さんに届けるために取り組んでいます。現在、30カ国で1つ以上の適応症に対し、370以上の医療機関で「キムリア」が使用可能です。臨床試験および実際の診療において、6,900例を超える患者さんが投与を受けられました。ノバルティスは、今後も、これまでの経験を活かして次世代CAR-T細胞療法の開発を行い、細胞治療の先駆として取り組んでいきます。ノバルティスの新しいT-ChargeTMプラットフォームを利用し、適応症を造血器腫瘍全体に拡大させ、さらに他のがん患者さんにも治癒の希望をもたらすことが期待されています。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者に届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は140カ国以上におよびます。
詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.com
以上
ノバルティス、小児および若年成人の進行したB細胞性ALL患者においてキムリア®の5年間データが寛解持続と長期生存が維持されることを示す(PDF 377KB)
参考文献
- Rives, S. et.al. Tisagenlecleucel in pediatric and young adult patients with relapsed/refractory (r/r) B-cell acute lymphoblastic leukemia (B-ALL): Final analyses from the ELIANA study. Oral presentation at: 2022 Hybrid Congress of the European Hematology Association (EHA), June 9-12, Vienna, Austria. Abstract #S112.
- Sperling, S. et. al. Phase I study data update of PHE885, a fully human BCMA-directed CAR-T cell therapy manufactured using the T-Charge™ platform for patients with relapsed/refractory (r/r) multiple myeloma (MM). Poster presented at: 2022 Hybrid Congress of the European Hematology Association (EHA), June 9-12, Vienna, Austria. Abstract #P1446.
- Munshi, N. et. al. Phase II study of PHE885, a B-cell maturation antigen-directed chimeric antigen receptor t-cell therapy, in adults with relapsed/refractory (r/r) multiple myeloma (MM). Publication only at: 2022 Hybrid Congress of the European Hematology Association (EHA), June 9-12, Vienna, Austria. Abstract #PB1983.
- Dickinson, M. et. al. Phase I study of YTB323, a chimeric antigen receptor (CAR)-T cell therapy manufactured using T-Charge™, in patients with relapsed/refractory diffuse large B-cell lymphoma (DLBCL). Oral presentation at: 2022 Hybrid Congress of the European Hematology Association (EHA), June 9-12, Vienna, Austria. Abstract #S212.
- Kymriah [prescribing information]. East Hanover, NJ: Novartis Pharmaceuticals Corp.