プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:レオ・リー、以下「ノバルティス ファーマ」)は、本日、再発または難治性(r/r)の濾胞性リンパ腫(FL)の治療薬として、CAR-T細胞療法「キムリア®点滴静注」(一般名:チサゲンレクルユーセル、以下「キムリア」)の効能追加の承認を取得しました。
濾胞性リンパ腫(FL)は一般的に悪性度の低い種類のがんで、緩徐に進行しますが、再発を繰り返すことも知られています1。早期に再発を経験する患者では5年生存率は約50%と予後が悪く2,3、進行性で悪性度の高いびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)へ形質転換する場合もあります1。
FLでは現在、複数の治療が利用可能な状況ですが、治療を重ねるたびに得られる有効性が急激に低下し、奏効期間が短くなる傾向にあります4,5。こうして、一部の患者では、再発と新たな治療というサイクルを繰り返し、治療選択肢が尽きてしまう場合があります。
悪性リンパ腫の患者団体である、一般社団法人グループ・ネクサス・ジャパンの天野慎介 理事長は濾胞性リンパ腫の課題を患者の視点から次のように述べています。
「濾胞性リンパ腫の治療は、近年、新しい治療薬の登場により選択肢が増えましたが、未だ治癒を目指すことは難しい状況です。患者は再発や、より悪性度の高いリンパ腫に変化する可能性と向き合いながら暮らしており、特に再発を繰り返している患者では、治療選択肢が少なくなることへの不安も感じています。治療により、状態が良くなるだけでなく、より長く良い状態が続くこと、そして、最終的には治癒が期待できる治療薬が望まれています。」
今回の効能追加の承認は、二次治療またはそれ以降の全身療法(抗CD20 抗体およびアルキル化剤を含む)に再発または難治性の成人FL 患者を対象として「キムリア」の有効性および安全性を評価する単群、非盲検、国際共同第II相臨床試験(ELARA試験)のデータ6,7に基づいています。
本試験では、高リスク患者を含むr/r FL患者において、主要評価項目(完全奏効率)の達成*に加え、副次評価項目(全奏効率や奏効期間等)の成績から持続的な奏効が確認されました。また、忍容可能な安全性プロファイルも示されました。このELARA試験に参加した患者は、中央値で4ラインの治療、多い場合では13ラインの治療を受けていました6。 今回の承認により、「キムリア」は再発と治療の連鎖に悩むFL患者にとって、新しい治療選択肢となる可能性があります。
*中間解析時(追跡調査期間中央値 9.9カ月、n=52)の完全奏効率は65%であり、事前に設定した有効性の基準である15%(2ライン以上の治療歴のあるr/r FL患者にidelalisibを投与した試験で得られた完全奏効率を基に設定)に対して統計的に有意であった。
有効性の評価が可能であった患者は94例で、追跡調査期間の中央値は約17カ月でした。そのうち、69%の患者が完全奏効を達成し、86%の患者が奏効(完全奏効または部分奏効)**を達成しました。奏効を達成した患者のうち、最初に奏効が確認されてから9カ月時点の奏効維持率は76%(完全奏効を達成した患者では87%)であり、本治療による持続的な奏効が示されました。「キムリア」は、多くの前治療歴、難治性疾患、初回治療開始後 24 カ月以内の疾患進行歴(POD24)、巨大病変、または濾胞性リンパ腫国際予後指標(FLIPI)スコアHigh等を有する高リスク患者においても有効であることが示されました。
**リンパ腫の効果判定では、完全奏効は、がんの兆候がすべてなくなる状態(必ずしも治癒ではない)、部分奏効は、がんの兆候が改善した状態を言います。治療効果判定:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ](ganjoho.jp)
安全性の評価が可能であった患者97例で、「キムリア」は既承認の適応症で認められたものと同様の忍容可能な安全性プロファイルを示しました。投与後8週間以内に患者の49%にサイトカイン放出症候群(CRS)(グレードを問わず)が発現しましたが、グレード3以上のCRSが報告された症例はいませんでした(CRSはLee尺度によるグレード判定)。投与後8週間以内に患者の37%に神経系事象(グレードを問わず)が発現しましたが、グレード3以上の神経系事象が認められたのは患者の3%でした。患者の18%は外来で投与を受けました。
有効性および安全性について、全体集団と日本人集団で同様の傾向が示されました。
「キムリア」の承認について、ノバルティス ファーマ株式会社の代表取締役社長であるレオ・リーは次のように述べています。「FL患者さんの中には、十分な効果が得られないまま、いくつもの治療を受け続けなければならない方も多く、そうした患者さん、ご家族のご負担は測りしれません。『キムリア』は長期におよぶ治療に苦しまれる再発・難治性の濾胞性リンパ腫患者さんを治療サイクルの連鎖から解き放つ可能性があります。患者さんだけでなく、ご家族や治療に臨まれる医療従事者の方々の負担軽減と希望につながることに期待をしています。」
「キムリア」(一般名:チサゲンレクルユーセル)について
「キムリア」は、2017年に世界に先駆けて米国食品医薬品局(FDA)に承認された初めてのCAR-T細胞療法です。「キムリア」は、がんを治療するために患者の免疫系を強化するようデザインされた単回投与の治療法です。「キムリア」は現在、本邦においてr/rの小児および若年成人(25歳まで)急性リンパ芽球性白血病(ALL)、r/rの成人びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)およびr/rの成人濾胞性リンパ腫(FL)の治療薬として承認されています。
濾胞性リンパ腫について (FL)について
FLは低悪性度のリンパ腫です。非ホジキンリンパ腫(NHL)の中でも2番目に多い疾患であり、NHL症例の約23%を占めています8。FLは再発を繰り返す治癒を目指すことが難しい悪性腫瘍と考えられています1,9。
2017 年時点で、国内の悪性リンパ腫の総患者数は70,000 人と推計されており10、その約95%にあたる66,500 人が非ホジキンリンパ腫であると言われています。NHL患者さんのうちFL 患者さんの割合は約23%と報告されていることから8、FL の総患者数は概ね15,000 人程度と推計されます。
細胞・遺伝子治療に対するノバルティスの取り組みについて
ノバルティスでは、4つのがん治療プラットフォーム(放射性リガンド療法、標的療法、免疫療法、および細胞・遺伝子治療)を独自の戦略として注力しています。この一環として、より多くの患者さんががんから解放された状態で生活できるように、細胞療法による治癒を目指しています。私たちは引き続き、時代に即したイノベーションをさらに前進させるために、科学を開拓し、製造とサプライチェーンのプロセスに投資していきます。
ノバルティスは世界で最初にCAR-Tの研究に大規模な投資を行い、世界的規模でCAR-T治験を開始した製薬会社です。ペンシルベニア大学ペレルマン医学部と共同で開発し、世界で初めて承認されたCAR-T細胞療法の「キムリア」は、CAR-T細胞療法に対するノバルティスの取り組みの基盤です。
ノバルティスは、「キムリア」をひとりでも多くの患者さんに届けるために取り組んでいます。現在、30カ国で1つ以上の適応症に対し、370以上の医療機関で「キムリア」が使用可能です。臨床試験および実際の診療において、6,900例を超える患者さんが投与を受けられました。ノバルティスは、今後も、これまでの経験を活かして次世代CAR-T細胞療法の開発を行い、細胞治療の先駆として取り組んでいきます。ノバルティスの新しいT-ChargeTMプラットフォームを利用し、適応症を造血器腫瘍全体に拡大させ、さらに他のがん患者さんにも治癒の希望をもたらすことが期待されています。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く医薬品のグローバルリーディングカンパニー、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬品と医療の未来を描いています。ノバルティスは世界で約11万人の社員を擁しており、8億人以上の患者さんに製品が届けられています。ノバルティスに関する詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.co.jp
以上
参考文献
- 日本血液学会(2018)造血器腫瘍診療ガイドライン2018 年度版
- Casulo C, Byrtek M, Dawson KL, et al. (2015) Early Relapse of Follicular Lymphoma After Rituximab Plus Cyclophosphamide, Doxorubicin, Vincristine, and Prednisone Defines Patients at High Risk for Death:An Analysis From the National LymphoCare Study. J Clin Oncol; 33(23):2516-22.
- Sortais C, Lok A, Tessoulin B, et al. (2020) Progression of disease within 2 years (POD24) is a clinically relevant endpoint to identify high-risk follicular lymphoma patients in real life. Ann Hematol; 99(7):1595-604.
- Link BK, Day BM, Zhou X, et al. (2019) Second-line and subsequent therapy and outcomes for follicular lymphoma in the United States: data from the observational National LymphoCare Study. Br J Haematol;184(4):660-3.
- Rivas-Delgado A, Magnano L, Moreno-Velázquez M, et al. (2019) Response duration and survival shorten after each relapse in patients with follicular lymphoma treated in the rituximab era. Br J Haematol;184(5):753-9.
- Data on File, Novartis, 2021.
- Fowler NH, Dickinson M, Dreyling M, et al. (2022) Tisagenlecleucel in adult relapsed or refractory follicular lymphoma: the phase 2 ELARA trial. Nat Med; 28(2):325-32.
- Kantar Health (2021) CancerMPact® Treatment Architecture Non-Hodgkin Lymphoma, Japan
- Carbone A, Roulland S, Gloghini A, et al. (2019) Follicular lymphoma. Nat Rev Dis Primers; 5(1):83
- 厚生労働省患者調査(2017)平成29 年(2017)
<参考資料>
製品名:
キムリア®点滴静注
一般名:
チサゲンレクルユーセル
効能、効果又は性能:
- 再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病。ただし、以下のいずれかの場合であって、CD19 抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない患者に限る。
- 初発の患者では標準的な化学療法を2回以上施行したが寛解が得られない場合
- 再発の患者では化学療法を1回以上施行したが寛解が得られない場合
- 同種造血幹細胞移植の適応とならない又は同種造血幹細胞移植後に再発した場合
- 再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫。ただし、以下のいずれかの場合であって、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない、かつ、自家造血幹細胞移植の適応とならない又は自家造血幹細胞移植後に再発した患者に限る。
- 初発の患者では化学療法を2回以上、再発の患者では再発後に化学療法を1回以上施行し、化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合
- 濾胞性リンパ腫が形質転換した患者では通算2回以上の化学療法を施行し、形質転換後には化学療法を1回以上施行したが、形質転換後の化学療法により完全奏効が得られなかった又は完全奏効が得られたが再発した場合
- 再発又は難治性の濾胞性リンパ腫。ただし、以下の場合であって、CD19抗原を標的としたキメラ抗原受容体発現T細胞輸注療法の治療歴がない患者に限る。
- 初発の患者では全身療法を2回以上、再発の患者では再発後に全身療法を1回以上施行し、全身療法により奏効が得られなかった又は奏効が得られたが再発した場合
用法及び用量又は使用方法:
〈医療機関での白血球アフェレーシス~製造施設への輸送〉
- 白血球アフェレーシス
十分量のT リンパ球を含む非動員末梢血単核球を採取する。 - 白血球アフェレーシス産物の凍結保存
採取後速やかに白血球アフェレーシス産物を調製し、液体窒素気相下又は-120℃以下で凍結保存する。 - 白血球アフェレーシス産物の輸送
凍結保存した白血球アフェレーシス産物を、梱包して本品製造施設へ輸送する。
〈医療機関での受入れ~投与〉
- 本品の受領及び保存
凍結した状態で本品を受領し、使用直前まで液体窒素気相下 又は-120℃以下で凍結保存する。 - 投与前の前処置
本品投与の2日前までに以下のリンパ球除去化学療法を前処置として行う。前処置の化学療法の特性や患者の状態を考慮の上、前処置から本品投与までに必要な間隔を設定する。ただし、本品の投与予定日前の1週間以内の末梢血白血球数が1,000/μL未満等、患者の状態によりリンパ球除去化学療法を省略することができる。
(1)再発又は難治性のCD19 陽性のB 細胞性急性リンパ芽球性白血病に用いる場合のリンパ球除去化学療法
1:シクロホスファミド(無水物として)500 mg/m2 を1 日1 回 2 日間点滴静注及びフルダラビンリン酸エステル30 mg/m2 を 1 日1 回4 日間点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
2:シクロホスファミドによるGrade 4 注)の出血性膀胱炎の既往がある、又はシクロホスファミドに抵抗性を示した患者には、シタラビン500 mg/m2 を1 日1 回2 日間点滴静注及びエ トポシド150 mg/m2 を1 日1 回3 日間点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
(2)再発又は難治性のびまん性大細胞型B 細胞リンパ腫、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫に用いる場合のリンパ球除去化学療法
1:シクロホスファミド(無水物として)250 mg/m2 を1 日1 回 3 日間点滴静注及びフルダラビンリン酸エステル25 mg/m2を 1 日1 回3 日間点滴静注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
2: シクロホスファミドによるGrade 4 注)の出血性膀胱炎の既往がある、又はシクロホスファミドに抵抗性を示した患者には、ベンダムスチン塩酸塩90mg/m2 を1 日1 回2 日間点滴静 注する。なお、患者の状態により適宜減量する。
注)Grade はCTCAE v.4.03 に準じる。
- 本品の投与
投与直前に本品を解凍し、適応症に応じて下記のとおり単回静脈内投与する。なお、本品の再投与はしないこと。
(1) 再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血 病に用いる場合
通常、25 歳以下(投与時)の患者には、体重に応じて以下の 投与量を単回静脈内投与する。
- 体重50 kg 以下の場合には、CAR 発現生T 細胞として0.2 ×106~5.0×106 個/kg
- 体重50 kg 超の場合には、CAR 発現生T 細胞として0.1× 108~2.5×108 個(体重問わず)
(2) 再発又は難治性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫に用いる場合
通常、成人には、CAR 発現生T 細胞として0.6×108~6.0×108 個(体重問わず)を単回静脈内投与する。
承認取得日:
2022年8月26日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
効能、効果又は性能効能又は効果に関連する注意並びに用法及び用量又は使用方法用法及び用量に関連する注意は、添付文書をご覧下さい。
ノバルティス ファーマ、再発または難治性の濾胞性リンパ腫の成人患者に対するCAR-T細胞療法として「キムリア®」の効能追加の承認を取得(PDF 351KB)