Nov 11, 2022

プレスリリース

報道関係各位

ノバルティス ファーマ株式会社

この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2022年10月24日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。本適応症は日本では未承認です。英語版は、https://www.novartis.comをご参照下さい。

  • 第III相APPLY-PNH試験は、抗C5抗体療法による前治療にもかかわらず貧血症状が残存している成人の発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者において、抗C5抗体療法に対する優越性を示す2つの主要評価項目を達成1
  • Iptacopanは、B因子を特異的に阻害するファースト・イン・クラスの補体副経路阻害剤であり、PNHにおいて初の経口単剤療法となる可能性を提示1-5
  • 抗C5抗体による治療にもかかわらず、PNH患者の大部分は貧血や疲労を呈し輸血に依存しており、PNHには抗C5抗体療法では対処できない重大なアンメットニーズが存在
  • APPLY-PNH試験の詳細な結果は、今後、医学会議で発表され、2023年の承認申請の一部として含まれる予定。補体阻害薬による治療歴のない患者を対象とした別の第III相APPOINT-PNH試験も進行中

2022年10月24日、スイス・バーゼル発―ノバルティスは本日、ピボタル第III相APPLY-PNH試験が2つの主要評価項目を達成したことを発表しました。本発表では、過去に抗C5抗体療法を受けたにもかかわらず、貧血症状が残存している発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH: Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria)の成人患者において、経口治験薬であるIptacopanの単剤療法が抗C5抗体療法(エクリズマブまたはラブリズマブ)よりも優れていることが示されました1。詳細な結果は、今後の医学会議で発表され、2023年の承認申請にも含まれる予定です。

主要な結果として、Iptacopan(200 mg1日2回投与)を投与された患者のうち、主要評価項目である24週時点で輸血を必要とせずにベースラインから2 g/dL以上のヘモグロビン値増加を達成した割合は、抗C5抗体療法と比較して統計学的に有意かつ臨床的に意味のある増加を示しました1。更に、同様に本試験の主要評価項目である、24週時点で輸血を必要とせずに12 g/dL以上のヘモグロビン値を達成したIptacopan群患者の割合は、抗C5抗体療法と比較して統計的に有意かつ臨床的に意味のある増加を示しました11。Iptacopanの忍容性は良好であり、安全性プロファイルは過去に報告されたデータと一致していました1, 2, 5

ノバルティスのグローバル医薬品開発担当プレジデント兼チーフメディカルオフィサーであるShreeram Aradhy,M.D.は次のように述べています。「これらの優れた第III相試験の結果は、PNHによる消耗性の貧血と生涯にわたる輸血の負担に苦しむ患者さんにとって、Iptacopanが診療の変化をもたらす可能性があることを強調するものです。このファースト・イン・クラスの補体副経路阻害剤を、PNH患者さんに対する初めての経口単剤療法としてお届けできるよう、今後規制当局とデータについて協議していきたいと考えています。」

ノバルティスは、本研究を可能にした患者や治験責任医師の時間、信頼、そして献身的な取り組みに感謝するとともに、IptacopanがPNHに対する最初の経口単剤療法の選択肢となる可能性を引き続き追求していきます。また、Iptacopanは現在進行中の第III 相APPOINT-PNH試験(NCT04820530)においても補体阻害薬による治療歴のないPNH患者を対象として検討されており、今後数カ月以内に結果が得られると予想されています6

更に、Iptacopanは補体介在性腎疾患(CMKD; Complement Mediated Kidney Diseases)であるC3腎症(APPEAR-C3G試験 [NCT04817618])、IgA腎症(APPLAUSE-IgAN試験 [NCT04578834])および非典型溶血性尿毒症症候群(APPELHUS試験 [NCT04889430])の患者を対象とした第III相試験を実施しています7-9

第III相APPLY-PNH試験について

APPLY-PNH試験(NCT04558918)は、Iptacopan経口単剤療法(200 mg 1日2回投与)の有効性および安全性を評価する第III相、多施設国際共同、非盲検無作為化試験であり、無作為化前の直近6カ月間に安定した用法用量で抗C5抗体療法を受けているにもかかわらず貧血症状が残存している成人患者において、抗C5抗体薬(エクリズマブまたはラブリズマブ)に対するIptacopanの優越性を検証するものでした10

主要評価項目の1つは、24週目に赤血球輸血なしでヘモグロビン値がベースラインから2 g/dL以上増加した患者の割合を評価することでした10。もう一つの主要評価項目は、24週目の時点で赤血球輸血なしで12 g/dL以上のヘモグロビン値を持続的に達成した被験者の割合を評価することでした10。副次評価項目には、輸血を必要としない被験者の割合、ヘモグロビン値の平均変化、疲労度の変化、網状赤血球絶対数の平均変化、乳酸脱水素酵素(LDH)値の平均変化率、ブレイクスルー溶血の発現率、および主要な血管系有害事象の発現率が含まれました10

本試験には97名の患者が登録され、8:5の比率で200 mg 1日2回のIptacopan単剤経口投与または抗C5抗体静脈内投与(無作為化前に受けていたものと同じ投与方法で継続)のいずれかに無作為化されました10

発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH: Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria)について

PNHは、希少、慢性かつ重篤な補体介在性血液疾患です2-5。PNH患者は、造血幹細胞(骨髄内に存在し、赤血球、白血球、血小板に成長・分化することができる)の一部に後天的変異があり、これにより、補体系による早期破壊を受けやすい赤血球が産生されます2-5,11-14。その結果、血管内溶血(血管内での赤血球の破壊)や血管外溶血(主に脾臓や肝臓での赤血球の破壊)が生じ、貧血(循環赤血球量が少ない)、血栓症(血の塊の形成)、疲労、その他の生活の質に影響を及ぼす消耗性症状が引き起こされます11-15

毎年、全世界で100万人あたり約1〜2人が新たにPNHと診断されると推定されています11, 16。PNHはどの年齢でも発症する可能性がありますが、その多くが30〜40歳で診断されています17

PNH患者の大部分は、抗C5抗体(エクリズマブまたはラブリズマブ)による治療にもかかわらず、貧血や疲労を呈し輸血に依存しており、PNHには抗C5抗体療法では対処できない重大なアンメットニーズが存在します2,11-15,18,19

Iptacopanについて

Iptacopanは、補体副経路のB因子を標的として阻害するファースト・イン・クラスの経口投与の治験薬です1-3。C5終末経路の上流で作用し、血管内だけでなく血管外におけるPNHの溶血も予防します1-3。このため、Iptacopanは経口単剤療法としての選択肢を提供すると共に、PNHに関与する主要な生物学的作用の一部を標的とすることで、抗C5抗体療法よりも治療上の利点があるのではないかと考えられています1-3

ノバルティスのバイオメディカル研究所で発見されたIptacopanは、現在、腎臓病であるC3腎症、IgA腎症、非典型的溶血性尿毒症(aHUS)など、重大なアンメットニーズが存在する多くの補体介在性疾患(CMD; Complement Mediated Diseases)を対象として開発が進められています。

疾患の有病率と第II相試験の肯定的なデータに基づき、IptacopanはFDAからPNHに対する画期的治療薬指定、FDAおよびEMAからPNHおよびC3Gに対する希少疾病用医薬品指定、EMAからC3Gに対するPRIME指定とIgANに対する希少疾病用医薬品指定を受けています20-23

ノバルティスについて

ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は140カ国以上におよびます。詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.com

以上

参考文献

  1. Novartis. Data on file.
  2. Jang JH, et al. Iptacopan Effectively Controls Intra- And Extravascular Hemolysis And Leads To Durable Hemoglobin Increase In Patients With Treatment-Naïve PNH. Abstract presented at the 26th Annual Congress of the European Hematology Association (EHA) 2021. 
  3. Schubart A, Anderson K, Mainolfi N, et al. Small-molecule factor B inhibitor for the treatment of complement-mediated diseases. Proc Natl Acad Sci U S A. 2019;116(16):7926-7931. doi:10.1073/pnas.1820892116.
  4. Merle NS, Noe R, Halbwachs-Mecarelli L, Fremeaux-Bacchi V, Roumenina LT. Complement System Part II: Role in Immunity. Front Immunol. 2015;6:257. Published 2015 May 26. doi:10.3389/fimmu.2015.00257.
  5. Risitano AM, et al. Addition of iptacopan, an oral factor B inhibitor, to eculizumab in patients with paroxysmal nocturnal haemoglobinuria and active haemolysis: an open-label, single-arm, phase 2, proof-of-concept trial. Lancet Haematol. 2021;8(5):e344-e354. doi: 10.1016/S2352-3026(21)00028-4.
  6. Clinicaltrials.gov. Study of Efficacy and Safety of Twice Daily Oral Iptacopan (LNP023) in Adult PNH Patients Who Are Naive to Complement Inhibitor Therapy (APPOINT-PNH). Available at https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04820530. Accessed September 2022.
  7. Clinicaltrials.gov. Study of Efficacy and Safety of Iptacopan in Patients With C3 Glomerulopathy. (APPEAR-C3G). Available at https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04817618. Accessed September 2022.
  8. Clinicaltrials.gov. Study of Efficacy and Safety of LNP023 in Primary IgA Nephropathy Patients (APPLAUSE-IgAN). Available at https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04578834. Accessed September 2022. 
  9. Clinicaltrials.gov. Efficacy and Safety of Iptacopan (LNP023) in Adult Patients With Atypical Hemolytic Uremic Syndrome Naive to Complement Inhibitor Therapy (APPELHUS). Available at https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04889430. Accessed September 2022.
  10. Clinicaltrials.gov. Study of Efficacy and Safety of Twice Daily Oral LNP023 in Adult PNH Patients With Residual Anemia Despite Anti-C5 Antibody Treatment (APPLY-PNH). Available at https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT04558918. Accessed September 2022.
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  13. Risitano AM and Rotoli B. Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria: pathophysiology, natural history and treatment options in the era of biological agents. Biologics 2008;2(2):205–222.
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  16. Cançado RD, Araújo A da S, Sandes AF, et al. Consensus statement for diagnosis and treatment of paroxysmal nocturnal haemoglobinuria. Hematol Transfus Cell Ther. 2021;43(3):341-348. doi:10.1016/j.htct.2020.06.006.
  17. Shah N, Bhatt H. Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria. [Updated 2021 Aug 9]. In: StatPearls [Internet]. Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2022 Jan-. Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK562292/.
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  21. Novartis. Data on file.
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  23. Novartis. Novartis announces European Medicines Agency (EMA) has granted orphan drug designation for iptacopan (LNP023) in IgA nephropathy (IgAN). Available at: https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-announces-europea…. Accessed September 2022.

ノバルティスの経口治験薬Iptacopan、第III相APPLY-PNH試験において抗C5抗体療法よりも臨床的に意義のある優越性を示す(PDF 328KB)