プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2022年12月13日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。本製品は日本では未承認です。英語版は、https://www.novartis.comをご参照下さい。
- 本試験では、抗C5抗体薬による前治療にもかかわらず貧血が残存している成人の発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者の大多数において、Iptacopanが輸血を必要とせずにヘモグロビン値を増加させることが示され、主要評価項目およびほとんどの副次的評価項目を達成した1
- Iptacopanは、赤血球輸血を必要とせずにヘモグロビン値がベースラインから2 g/dL以上増加した患者*の推定割合において、抗C5抗体薬との80%差を示した1
- Iptacopanは、赤血球輸血を必要とせずにヘモグロビン値が12 g/dL以上増加した患者*の推定割合において、抗C5抗体薬との67%の差を示した1
- また、iptacopanはほぼすべての患者で輸血を必要とせず、ブレイクスルー溶血(BTH)についても重篤な症例は認められなかった。臨床的に意味のある患者報告に基づく疲労も改善を認めた1
- 補体阻害薬による治療歴のない患者を対象としたAPPOINT-PNH 第III相試験においても肯定的な結果が得られたことを最近発表しており、PNHにおけるiptacopanのエビデンスをさらに強固にした2
2022年12月13日、スイス・バーゼル発―ノバルティスは本日、ピボタル第III相APPLY-PNH試験の詳細な結果を発表しました1。本試験結果により、経口治療薬であるiptacopanの単剤療法を受けた発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)患者の大多数が、抗C5抗体薬と比較して、臨床的に意味のあるヘモグロビン値の増加を達成したことが示されました1。本試験は主要評価項目およびほとんどの副次的評価項目を達成し、抗C5抗体薬による治療にもかかわらず貧血が残存している成人PNH患者において、抗C5抗体薬に対するiptacopanの優越性が示されました1。
本試験において、iptacopan単剤療法の安全性プロファイルはこれまでの報告と一致しており、莢膜形成細菌に起因する重篤な感染症は認められませんでした1,3,4。APPLY-PNH試験の24週間の無作為化治療期の結果は、第64回米国血液学会(ASH)年次総会のレイトブレーキング・アブストラクトセッションで口頭発表され、プレスブリーフィングで紹介されました。
主任治験責任医師であり、Saint-Louis Hospital、Greater Paris University HospitalのRégis Peffault de Latour教授(M.D., Ph.D.)は次のように述べています。「PNH患者さんの半数以上は抗C5抗体薬を投与しても貧血が残存し、多くの患者さんは治療中も輸血を必要とします。貧血の残存は血管外溶血と呼ばれる、脾臓や肝臓での赤血球の破壊に対して抗C5抗体薬は効果がないことが主な原因です。」「第III相APPLY-PNH試験の結果によると、iptacopanの経口投与は、静脈内投与の抗C5抗体薬と比較して血管外溶血の改善および血管内溶血抑制の維持において優れており、この慢性的な経過をたどる血液疾患の患者さんにとって画期的なベネフィットをもたらす可能性を示しています。」
本試験は2つの主要評価項目の両方を達成し、iptacopanは抗C5抗体薬に対する優越性を示しました1。1つ目の主要評価項目の、赤血球輸血を必要とせずにベースラインから2 g/dL以上のヘモグロビン値増加を達成した患者の推定割合は、iptacopan群では82.3%*(95% 信頼区間[CI]:73.4, 90.2)、抗C5抗体薬群では2.0%*(95% CI:1.1, 4.1)で、iptacopan群に多く、80.3%*の有意な推定治療群間差が認められました(95% CI:71.3, 87.6; P<0.0001)1。この主要評価項目を達成した患者数の観察データは、抗C5抗体薬群が35名中0名であったのに対し、iptacopan群は60名中51名#でした1。
2つ目の主要評価項目の、輸血を必要とせずに12 g/dL以上へのヘモグロビン値の増加を達成した患者の推定割合は、iptacopan群では68.8%*(95% CI:58.3, 78.9)、抗C5抗体薬群では1.8%*(95% CI:0.9, 4.0)で、iptacopan群で多く、67.0%*の有意な推定治療群間差が認められました(95% CI:56.3, 76.9; P<0.0001)1。この主要評価項目を達成した患者数の観察データは、抗C5抗体薬群が35名中0名であったのに対し、iptacopanは60名中42名#でした1。
国際PNH専門家会議(International PNH Interest Group)会長であり、AORN San Giusepe Moscati(イタリア、Avellino)の再生不良性貧血および発作性夜間ヘモグロビン尿症リファレンスセンター、血液・造血器移植部門長である治験責任医師のAntonio Risitano, M.D., Ph.D.は次のように述べています。 「Iptacopan群のほぼすべての患者さん(62名中60名)において、6カ月間の治療後も輸血を必要としない状態が維持されたのに対し、抗C5抗体薬群の患者では35名中14名のみでした。この結果は、2 g/dL以上もの卓越したヘモグロビン値の増加が60名中51名に認められたことと相まって、iptacopanが承認されればPNH患者さんの治療および転帰を変える可能性があることを示唆しています。」
ノバルティスの循環器・腎・代謝領域開発部門統括責任者であるDavid Soergel, M.D.は、「第III相APPLY-PNHと最近発表された第III相APPOINT-PNH試験の肯定的な結果により、ノバルティスには2023年の承認申請を裏付ける包括的なデータパッケージがあり、iptacopanはPNH患者さんに対する初の経口単剤療法となる可能性があります」と述べています。
また、iptacopanは、ベースラインからのヘモグロビン値の変化、輸血非依存性、患者報告による疲労[慢性疾患治療の機能評価―疲労(FACIT-F)スコアに基づく]、網状赤血球数(幼若な赤血球)および臨床的BTH発現率等の、ほとんどの副次評価項目で、抗C5抗体薬に対する優越性を示しました1。
ヘモグロビン値のベースラインからの変化量はiptacopan群では調整平均が+3.59(95% CI:3.32, 3.86)g/dLであったのに対して、抗C5抗体薬群では-0.04(95% CI:-0.42, 0.35)g/dLと、iptacopan群において良好であり、調整平均群間差+3.63 g/dLの有意な改善が認められました(95% CI:3.18, 4.08; P<0.0001)1。輸血の有無によらない平均ヘモグロビン値は、抗C5抗体薬群では9.2(標準偏差[SD]:1.4)g/dLであったのに対し、iptacopan群では12.6(SD:1.4)g/dLでした1。
無作為化前の6カ月間に、57.7%の患者が輸血を受けていました1。24週間の投与後、無輸血状態であった患者の推定割合は、iptacopan群では96.4%*(95% CI:90.7, 100.0)、抗C5抗体薬群では26.1%*(95% CI:12.4, 42.7)と、iptacopan群において良好であり、70.3%*の有意な推定治療群間差が認められました(95% CI:52.6, 76.9; P<0.0001)1。この副次評価項目を達成した患者数の観察データは、抗C5抗体薬群が35名中14名であったのに対し、iptacopan群は62名中60名でした1。Iptacopan群ではFACIT-Fスコアのベースラインからの変化量の調整平均が+8.59(95% CI:6.72, 10.47)ポイントに対し、抗C5抗体薬群では+0.31(95% CI:-2.20, 2.81)ポイントであり、iptacopan群において調整平均群間差+8.29ポイントの有意な改善が認められました(95% CI:5.28, 11.29; P<0.0001)1。
主要血管イベントの発現率や乳酸脱水素酵素値のベースラインからの変化については、iptacopan群と抗C5抗体薬群との間に有意差は認められませんでしたが、後者の結果は血管内溶血の抑制が維持されたことを示唆しています1。
Iptacopan群で最も多く報告された有害事象は頭痛(iptacopan群:16.1%、抗C5抗体薬群:2.9%)、下痢(iptacopan群:14.5%、抗C5抗体薬群:5.7%)であり、抗C5抗体薬群で最も多く報告された有害事象はCOVID-19(抗C5抗体薬群:25.7%、iptacopan群:8.1%)、BTHイベント(抗C5抗体薬群:17.1%、iptacopan群:3.2%)でした1。抗C5抗体薬群において、溶血による重篤な有害事象が2名に発現したのに対し、iptacopan群では発現を認めませんでした1。有害事象のためにIptacopan又は抗C5抗体薬の投与を中止した患者はいませんでした1。
本試験とは別に、ノバルティスは補体阻害薬による治療歴のないPNH患者を対象とした第III相APPOINT-PNH試験において、iptacopanが臨床的に意味のあるヘモグロビン値の増加を示したことを最近発表しました2,5。APPLY-PNH試験およびAPPOINT-PNH試験のデータは、2023年の国際的な承認申請資料の一部として含まれる予定です。
ASHでのAPPLY-PNH試験のデータ発表後、ノバルティスは2022年12月13日 18:30(CET)/12:30(ET)に投資家向け電話会議を開催する予定です。同時中継のウェブキャストは、ノバルティスのウェブサイトhttps://www.novartis.com/investors/event-calendarからアクセスすることができ、電話会議後にリプレイが利用可能です。
*これらの患者の推定割合は、あらかじめ規定したロジスティック回帰モデルを用いて算出した周辺割合です(このロジスティック回帰モデルは周辺割合の差および95% CIについても適用)1。周辺割合は、各患者が評価項目の判定基準を満たす確率から算出された集団平均確率を反映しています1。周辺割合はベースライン共変量で調整され、欠測データは補完されました1。
#評価可能な欠測のないデータはiptacopan投与患者60名(本試験のIptacopan投与患者計62名のうち)で入手できました1。
第III相APPLY-PNH試験について
APPLY-PNH試験(NCT04558918)は、iptacopan経口単剤療法(200 mg 1日2回投与)の有効性および安全性を評価する第III相、多施設国際共同、非盲検無作為化試験であり、無作為化前の6カ月間に安定した用法用量で抗C5抗体療法を受けているにもかかわらず貧血が残存している成人PNH患者において、抗C5抗体薬(エクリズマブまたはラブリズマブ)に対するiptacopanの優越性を検証するものでした1,6。
発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH: Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria)について
PNHは、希少、慢性かつ重篤な補体介在性血液疾患です7。PNH患者は、造血幹細胞(骨髄内に存在し、赤血球、白血球、血小板に成長・分化する)の一部に後天的遺伝子変異を有し、これにより、補体系による早期破壊を受けやすい赤血球が産生されます7,8。その結果、血管内溶血(血管内での赤血球の破壊)や血管外溶血(主に脾臓や肝臓での赤血球の破壊)が生じ、貧血(循環赤血球量が少ない)、血栓症(血の塊の形成)、疲労、その他の生活の質に影響を及ぼす消耗性症状が引き起こされます7,8。全世界で100万人あたり約1〜2人がPNHと診断されると推定されています7。PNHはどの年齢でも発症する可能性がありますが、その多くが30〜40歳で診断されています9,10。PNH患者の大部分は、抗C5抗体薬(エクリズマブまたはラブリズマブ)による治療にもかかわらず、貧血や疲労を呈し、輸血を必要とするため、PNHには抗C5抗体療法では対処できない重大なアンメットニーズが存在します7,8,11,12。
Iptacopanについて
Iptacopanは、補体副経路のB因子を標的として阻害するファースト・イン・クラスの経口投与の治験薬です1,3,4,13。C5終末経路の上流で作用し、血管内だけでなく血管外におけるPNHの溶血も予防します1-3。このように、iptacopanはPNHに関連する生物学的に重要な部分を標的とし、経口単剤療法としての選択肢を提供します1-3。
ノバルティスのバイオメディカル研究所で発見されたiptacopanは、現在、腎臓病であるC3腎症(C3G)、免疫グロブリンA(IgA)腎症(IgAN)、非典型的溶血性尿毒症(aHUS)など、重大なアンメットニーズが存在する多くの補体介在性疾患(CMD; Complement Mediated Diseases)を対象として開発が進められています。C3G(APPEARC3G)およびIgA腎症(APPLAUSE IgAN)における第III相試験の最初の結果は、2023年に予定されています14,15。
疾患の有病率と第II相試験の肯定的なデータに基づき、iptacopanは米国食品医薬品局(FDA)からPNHに対する画期的治療薬指定、FDAおよび欧州医薬品庁(EMA)からPNHおよびC3Gに対する希少疾病用医薬品指定、EMAからC3Gに対するPRIME指定とIgANに対する希少疾病用医薬品指定を受けています16-19。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、これからの医薬の未来を描いています。私たちは、医薬品のグローバルリーディングカンパニーとして、革新的な科学とデジタルテクノロジーを駆使し、医療ニーズの高い領域で変革をもたらす治療法の開発を行っており、新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。ノバルティスの製品は、世界中の8億人以上の患者さんに届けられています。また、私たちは、ノバルティスの最新の治療法に多くの人がアクセスできるように革新的な方法を追求しています。約11万人の社員が世界中のノバルティスで働いており、その国籍は140カ国以上におよびます。詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.com
以上
参考文献
- Peffault de Latour R, Röth A, Kulasekararaj A, et al. Oral Monotherapy with Iptacopan, a Proximal Complement Inhibitor of Factor B, Has Superior Efficacy to Intravenous Terminal Complement Inhibition with Standard of Care Eculizumab or Ravulizumab and Favorable Safety in Patients with Paroxysmal Nocturnal Hemoglobinuria and Residual Anemia: Results from the Randomized, Active-Comparator-Controlled, Open-Label, Multicenter, Phase III APPLY-PNH Study. Presented at: 64th American Society of Hematology Annual Meeting & Exposition (ASH); December 10-13, 2022; New Orleans, LA.
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- Risitano AM, Röth A, Soret J, et al. Addition of iptacopan, an oral factor B inhibitor, to eculizumab in patients with paroxysmal nocturnal haemoglobinuria and active haemolysis: an open-label, single-arm, phase 2, proof-of-concept trial. Lancet Haematol. 2021;8(5):e344-e354. doi:10.1016/S2352-3026(21)00028-4.
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- Novartis investigational oral therapy iptacopan (LNP023) receives FDA Breakthrough Therapy Designation for PNH and Rare Pediatric Disease Designation for C3G. Novartis. Accessed September 22, 2022. https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-investigational-o….
- Novartis data on file.
- Novartis announces European Medicines Agency (EMA) has granted orphan drug designation for iptacopan (LNP023) in IgA nephropathy (IgAN). Novartis. Accessed September 22, 2022. https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-announces-europea….
- Novartis received European Medicines Agency (EMA) PRIME designation for iptacopan (LNP) in C3 glomerulopathy (C3G). Novartis. Accessed September 22, 2022. https://www.novartis.com/news/media-releases/novartis-received-european….
ノバルティス、米国血液学会において、経口単剤治療薬iptacopanの抗C5抗体薬に対する優越性を示すピボタル第III相臨床試験APPLY-PNHのデータを発表(PDF 380KB)