プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
この資料は、ノバルティス(スイス・バーゼル)が2023年6月12日(現地時間)に発表したものを日本語に翻訳(要約)したもので、参考資料として提供するものです。資料の内容および解釈については、英語が優先されます。英語版は、https://www.novartis.comをご参照下さい。
第53条LRに基づく臨時発表
- チヌーク・セラピューティクス社は、希少かつ進行性の慢性腎臓病である免疫グロブリンA腎症(IgAN)を対象とした高価値で後期開発段階の資産を2つ保有する臨床段階のバイオ医薬品企業
- IgANを対象に第3相試験が行われている経口エンドセリンA受容体拮抗薬のアトラセンタンと、IgANを対象に第3相試験が開始される予定の抗APRILモノクローナル抗体のzigakibartを含む取引について合意
- 通常の取引完了要件に従い、最大35億米ドルの取引額(一株あたり現金40米ドルに加え、特定の規定上の条件を満たした時に一株当たり現金4米ドルを上限とする現金を受け取る権利を含む)がノバルティスとチヌーク社の取締役会により承認され、2023年後半に完了予定
2023年6月12日、スイス・バーゼル発 ―ノバルティスは本日、米国ワシントン州シアトルに拠点を置く臨床段階のバイオ医薬品企業であるチヌーク・セラピューティクス社を買収する契約を締結したことを発表しました。同社は希少かつ重度の慢性腎疾患を対象とした高価値で後期開発段階にある医薬品を2つ保有しています。本案件は、通常の取引完了要件に基づき、革新的医薬品に焦点を当てるノバルティスの戦略と完全に一致しており、当社の腎臓領域ポートフォリオの大幅な拡大と既存のパイプラインの補完を実現します。
ノバルティスの最高経営責任者(CEO)であるヴァス・ナラシンハン(医学博士)は次のように述べています。「IgANは深刻な疾患です。主に若年成人が発症し、透析や腎移植に至る可能性があります。私たちは、切望されているさらなる治療選択肢を患者さんに提供できる可能性があり、社会の最も困難な医療課題の一つに対処するこの類まれな機会に胸を躍らせています。私たちは、取引が成立し、チヌーク社員のために円滑な移行を行い、彼らをノバルティスに迎え入れるのを楽しみにしています。」
チヌーク社のパイプラインには、IgANを治療するための後期臨床開発段階にある2つの資産があります。IgANは、主に若年成人に発症し、現時点では標的治療の選択肢がない進行性の希少な腎疾患です。10人中3人の患者さんが10年以内に腎不全に進行し透析が必要となる可能性があります1,2。
現在IgANを対象とした第3相試験を実施中であり、2023年第4四半期に極めて重要なreadout(データの読み出し)が予定されている経口エンドセリンA受容体拮抗薬(ERA)アトラセンタンは、蛋白尿の有意な減少効果を示しました。また、アトラセンタンは他の希少腎疾患に対しても開発初期段階において検討が進められています。zigakibart(BION-1301)は皮下投与用の抗APRILモノクローナル抗体であり、IgANを対象とした第3相試験を2023年第3四半期に開始する予定です。
チヌーク社には、腎臓病のモデリングとその理解に関する深い専門知識があり、多くの重度の腎臓疾患に対処するための有望な早期パイプラインを保有しています。
取引の詳細
両社の取締役会にて全会一致で承認された本案件において、ノバルティスは、新たに設立するノバルティスの子会社を合併する形で、最大総額35億米ドルでチヌーク社を買収する予定です。合併契約の条件に基づき、チヌーク社の普通株式の保有者に対して、完了時に32億米ドル(一株当たり40.00米ドル)が現金で支払われ、これに加えて、特定の規定上の条件を満たした時に3億米ドル(一株当たり4.00米ドル)を上限とする支払いを受ける権利が付与されます。本取引は、チヌーク社の株主の承認や規制当局の承認を含む通常の取引完了要件に従って、2023年下半期に完了する見込みです。取引が完了するまで、チヌーク社は別個の独立した企業として運営を続けます。
IgANについて
IgANは主に若年成人に発症する進行性の稀な腎疾患であり、現時点では標的治療の選択肢がありません。IgANでは、異常な形のIgAに対する自己免疫反応によって腎臓に沈着する免疫複合体が形成されます。これらの免疫複合体は炎症及び腎損傷を引き起こし、進行性の腎機能低下につながります3。
米国では、年間で100万人あたり最大21人がIgANを発症しており4-6、アジア人集団における発症率が高くなっています。IgANは白人の若年成人における腎不全の最も一般的な原因です7。 腎臓の損傷が増すにつれて、蛋白尿(尿中の蛋白質)及び血尿(尿中の血液)が生じる可能性があります8,9。 尿中蛋白質濃度が高い(一日あたり1g以上)IgAN患者さんの場合、疾患が進行するリスクが高く、約30%が10年以内に腎不全に進行します1,2。異なる疾患経路を標的とした複数の新規治療法が利用できれば、IgAN患者さんの治療状況を変え、IgAN患者さんが生涯において末期腎疾患を発症しないという見通しを提供することができます10。
アトラセンタンとzigakibart
アトラセンタンは、第2相試験において、ベースラインと比較して蛋白尿を有意に減少させ、肝臓の安全性プロファイルを含めて良好な忍容性を示しました。zigakibartは、IgANの根本原因や異常なガラクトース欠損IgAの産生に対処し、腎機能を保持する可能性がある生物学的標的療法です。第1/2相の中間データは、ベースラインと比較して蛋白尿の大幅な減少を示しました。標的療法として、zigakibartは広範に作用するリンパ球枯渇療法よりも良好な忍容性プロファイルを示すことが期待されています。
免責事項
本リリースには、現時点における将来の予想と期待が含まれています。したがって、その内容に関して、また、将来の結果については、不確実な要素や予見できないリスクなどにより、現在の予想と異なる場合があることをご了承ください。なお、詳細につきましては、ノバルティスが米国証券取引委員会に届けておりますForm20-Fをご参照ください。
ノバルティスについて
ノバルティスは、より充実したすこやかな毎日のために、医薬の未来を描いています。社会が直面する数々の重大な疾病負担を軽減するために、価値のある医薬品の創出を志し、研究開発における技術的リーダーシップと新しいアクセスの在り方を追求しています。新薬開発のために、常に世界トップクラスの研究開発費を投資しています。世界の約8億人の患者さんに当社の製品を届けるために、約10万3千人の社員が世界中で働いており、その国籍は140カ国以上に及びます。詳細はホームページをご覧ください。
https://www.novartis.com
以上
参考文献
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- Sevillano, A.M., Gutiérrez, E., Yuste, C., Cavero, T., Mérida, E., Rodríguez, P., García, A., Morales, E., Fernández, C., Martínez, M.A. and Moreno, J.A., 2017. Remission of hematuria improves renal survival in IgA nephropathy. Journal of the American Society of Nephrology, 28(10), pp.3089-3099.
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- Nolin, L. and Courteau, M., 1999. Management of IgA nephropathy: evidence-based ecommendations. Kidney International, 55, pp.S56-S62.doi: 10.1046/j.1523-1755.1999.07008.x. PMID: 10369196.
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- Haresh Selvaskandan, Guillermo Gonzalez-Martin, Jonathan Barratt & Chee Kay Cheung (2022) IgA nephropathy: an overview of drug treatments in clinical trials, Expert Opinion on Investigational Drugs, 31:12, 1321-1338.
ノバルティス、チヌーク・セラピューティクス社を前払い金32億米ドル(一株あたり40米ドル)で買収合意、革新的な医薬品戦略と腎臓領域のパイプラインを強化(PDF 366KB)