Jun 24, 2024

プレスリリース

報道関係各位

ノバルティス ファーマ株式会社

​ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:レオ・リー、以下「ノバルティス ファーマ」)は、本日、「ファビハルタ®カプセル 200mg」(一般名:イプタコパン塩酸塩水和物、以下「ファビハルタ」)について、発作性夜間ヘモグロビン尿症(以下、「PNH」)に対する承認を取得しましたので、お知らせします。

PNHは、後天性の遺伝子異常により赤血球が補体の攻撃を受けやすくなる血液疾患で、産生された赤血球(PNH型赤血球)は血管内で補体により破壊され溶血が起こります1。PNH患者さんの特徴的な症状は、血管内溶血が生じることによる貧血や疲労、早朝のヘモグロビン尿(コーラ色の尿)で2,3、極めて緩徐に進行しますが、溶血発作を繰り返すうちに、造血不全や血栓症を生じることもあります。

PNHの主な治療法は、上記症状に対する輸血を含めた対症療法であり、現在では補体阻害剤が使用されています。唯一の根治治療は造血幹細胞移植ですが、合併症のリスクの高さから適応となる患者さんは限られています3,4。近年では新たな治療薬も登場し、治療選択肢が増えてきていますが、依然として貧血や疲労感など溶血に伴う症状が治療課題として残っております。

「ファビハルタ」は経口単剤で治療するファーストインクラスの補体B因子阻害剤です。「ファビハルタ」は補体第二経路上流でB因子と結合してその活性を阻害することで、C3転換酵素の活性を阻害して第二経路の活性化を阻害します。これにより、PNH型赤血球に対して膜侵襲複合体(MAC)形成の阻害およびC3フラグメントの蓄積(オプソニン化)を阻害し、血管内溶血だけではなく、血管外溶血も抑制します。溶血をコントロールすることで貧血や疲労の改善、輸血の回避が期待されています。​

 

この度の承認はAPPLY-PNH試験(国際共同第Ⅲ相試験)のデータに基づいています。補体C5阻害剤による前治療にもかかわらず、貧血が残存している 成人患者さんにおいて、「ファビハルタ」への切り替え投与は、補体C5阻害剤の継続投与に対する有効性を示しました5。また、 APPLY-PNH 試験で「ファビハルタ」の投与を受けた患者さんにおいて、輸血回避や患者報告による疲労感の改善(平均FACIT-F*スコアの改善)が認められました。

「ファビハルタ」では、一部の細菌による重篤な感染症を発症しやすくなる可能性があるため、投与前に髄膜炎菌、肺炎球菌及びインフルエンザ菌b型に対するワクチン接種が必要となります。

今回の承認について、ノバルティス ファーマの代表取締役社長であるレオ・リーは、次のように述べています。「PNHと診断されるまでに長い時間を要し、また治療中でも貧血や疲労などの症状に悩まされている患者さんが多く、その不安や負担は計り知れません。ファビハルタにより、PNHの患者さんが経口単剤治療で症状の改善を実感し、よりQOLの高い生活できる可能性があります。今回の承認により、希少疾患であるPNHの治療に貢献できることを嬉しく思います。」 

「ファビハルタ」の試験結果

< APPLY-PNH試験 >
本試験は、補体C5阻害剤投与下で貧血を有するPNH患者を対象とした第III相、多施設国際共同のランダム化非盲検実薬対照並行群間比較試験です。主要評価項目は、24週目に赤血球輸血なしでヘモグロビン値がベースラインから2 g/dL以上増加した患者の割合を評価することでした。もう一つの主要評価項目は、24週目の時点で赤血球輸血なしで12 g/dL以上のヘモグロビン値を持続的に達成した被験者の割合を評価することでした。24週の主要評価期に有効性の評価が可能であった患者97例(日本人9例を含む)のうち、それぞれ無輸血でHb値2g/dL以上の増加が「ファビハルタ」群と補体C5阻害剤群の調整群間差80.2%、Hb値12g/dL以上が「ファビハルタ」群と抗C5抗体薬群の調整群間差67.0%と「ファビハルタ」群の優越性が検証されました(いずれも未調整の両側p値<0.0001、Firth補正を用いたロジスティック回帰モデル、検証的解析結果)。48週の継続投与期終了時の副作用発現割合は「ファビハルタ」群21.9%で、主な副作用は頭痛5.2%(5/96例)、血小板数減少及び悪心4.2%(4/96例)、下痢及び関節痛3.1%(3/96例)でした。重篤な副作用は「ファビハルタ」群で血中クレアチンホスホキナーゼ増加が1例報告されましたが、投与中止、死亡に至った副作用は認められませんでした。

PNHについて

PNHは、後天性の遺伝子異常により赤血球が補体の攻撃を受けやすくなる血液疾患で、補体に対する防御タンパクを失った赤血球(PNH赤血球)が血管内で補体の攻撃を受けて破壊されます。病名の由来となっている早朝のヘモグロビン尿が診断時に確認できる患者さんは全体の1/4~1/3程度と多くなく、貧血や疲労感、血栓症など患者さんごとに受診時にかかえる状態はさまざまです。日本における推定患者数は約1,000人と非常にまれな疾患で、全世界でみても、100万人当たり10~20人と推定されています。PNHはどの年齢でも発症する可能性がありますが、その多くが30〜40歳で診断されています。溶血所見に基づく重症度分類によって中等症以上と判定された場合は、「指定難病」に認定されます。

補体について

補体とは自然免疫システムの一つであり、体内に侵入した病原微生物を排除する抗体の働きを補助する物質として発見されたことから、補体と名付けられました6。補体では、C1からC9(Cは英語で補体を示すComplementに由来)の9つの成分をはじめ、補体の活性化を制御する補体制御因子のほか関連する複数の因子など20種類以上の蛋白質が働いています。通常、補体の活性化と制御因子が絶妙なバランスで成立することで、生体防御の役割を果たしていますが、補体活性化が亢進したり、制御因子に機能異常が起きたりすることで、そのバランスが崩壊して様々な補体介在性疾患を発症します。補体の活性経路には古典経路、第二経路、レクチン経路の3種類があります。近年では、第二経路の制御異常が、様々な疾患の発症と関連することが判明しており、PNHもそのうちの1つです。

ノバルティス ファーマ株式会社について

ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く革新的医薬品のグローバル製薬企業、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実した健やかな毎日のために、「医薬の未来を描く(Reimagining Medicine)」ことを追求しています。
詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.co.jp
ノバルティス ファーマ株式会社のソーシャルメディアもご覧ください。Facebook LinkedIn X/Twitter Instagram

以上

* FACIT-F:Functional Assessment of Chronic Illness Therapy –
Fatigue Scale(慢性疾患治療-疲労の機能評価)。様々な疾患の臨床試験や研究で使用されている評価尺度の1つで特に疲労感に焦点を置いています。

参考文献

  1. Hill A, DeZern AE, Kinoshita T, et al. Paroxysmal nocturnal haemoglobinuria. Nat Rev Dis
    Primers; 2017, 3:17028.
  2. Brodsky RA “Paroxysmal nocturnal hemoglobinuria. Blood;” 2014, 124(18):2804-11.
  3. 特発性造血障害に関する調査研究班,『発作性夜間ヘモグロビン尿症診療の参照ガイド令和4 年度改訂版』. Accessed Jun 23, 2023. http://zoketsushogaihan.umin.jp/file/2022/Paroxysmal_nocturnal_hemoglob…
  4. Risitano AM, Marotta S, Ricci P, et al. “Anti-complement treatment for paroxysmal nocturnal
    hemoglobinuria: Time for proximal complement inhibition?” A position paper from the SAAWP of the
    EBMT. Front Immunol; 2019, 10:1157.
  5. ファビハルタ カプセル 開発資料
  6. 植田康敬. FOCUS. よみがえる補体科学最近注目の補体が関わる病気を知る「補体」シリーズ第4回. 一般社団法人日本補体学会発行. 2018.
     

<参考資料>
「ファビハルタ®カプセル」の製品概要

製品名: 
「ファビハルタ®カプセル 200mg」(Fabhalta® Capsules)

一般名:
イプタコパン塩酸塩水和物
(Iptacopan Hydrochloride Monohydrate)

効能又は効果**:
発作性夜間ヘモグロビン尿症

用法及び用量**:
通常、成人にはイプタコパンとして1回200mgを1日2回経口投与する。

承認取得日: 
2024年6月24日

製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社

**「効能又は効果に関連する注意」、ならびに「用法及び用量に関連する注意」の詳細については、電子化された添付文書(電子添文)をご覧下さい。

 

 

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