プレスリリース
報道関係各位
ノバルティス ファーマ株式会社
ノバルティス ファーマ株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:レオ・リー、以下「ノバルティス ファーマ」)は、本日、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害剤「ジャカビ®錠5mg、同10mg」(一般名:ルキソリチニブリン酸塩、以下「ジャカビ」)について、「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」の小児(6歳以上12歳未満)に対する用法及び用量の追加承認を取得しました。また、「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」の小児(12歳未満)に対する小児用製剤「ジャカビ®内用液小児用0.5%」の承認も取得しましたので、併せてお知らせします。
移植片対宿主病(GVHD)は、同種造血幹細胞移植(同種HSCT)で多く認められる移植合併症です1。ドナー由来の免疫細胞が、同種HSCTを受けた患者さん(宿主)の正常な組織を異物とみなし攻撃することにより引き起こされ、急性GVHDと慢性GVHDに分けられます。急性GVHDは移植後早期にみられ、皮膚、肝臓、消化管が障害され、早期の死亡の原因の一つとなる重大な合併症で、小児でも成人と同様に同種HSCT後の予後不良及び死亡の主な要因になっています1‐4。慢性GVHDはより多くの臓器が障害を受け、晩期の死亡リスクを高めることに加えて、身体的及び機能的な健康状態に悪影響を与える疾患です5。同種HSCTは、悪性及び非悪性の血液疾患の根治につながる可能性を持つ治療法で、移植対象となる疾患の種類が成人と比べて小児では多様であり、国内の小児患者での年間実施数は約400件です6。同種HSCTにより疾患の根治が期待できるにも関わらず、同種HSCT後にGVHDを発症し患者さんの予後を悪化させてしまうリスクが、同種HSCTの障壁となっていることが課題とされています7,8。
GVHDの現在の標準的な一次治療は、小児でも成人と同様に、副腎皮質ステロイド(ステロイド)の全身投与とされています。しかし、およそ半数の患者さんがステロイド抵抗性を来すとされ、そのような患者さんでは二次治療が必要となりますが、小児GVHD患者での有効性及び安全性が確立された二次治療法はありません5。また、小児GVHD患者での副腎皮質ステロイドの長期的な曝露及び毒性に伴うリスクを考慮すると、ステロイドの軽減に至る治療法が重要とされています9。2023年8月23日のステロイド抵抗性のGVHD患者さんに対する「ジャカビ」承認により、12歳以上の患者さんでは治療選択肢の1つとなりましたが、12歳未満の患者さんでは依然として高いアンメットニーズが存在していました。
この度の承認は、28日齢以上18歳未満の急性GVHD及び慢性GVHDに対する「ジャカビ」の有効性、安全性、薬物動態を評価した国際共同第I/II相試験(F12201試験/REACH4試験、日本人患者6名を含む45名)及び国際共同第II相試験(G12201試験/REACH5試験、日本人患者7名を含む45名)のデータに基づいています。両試験の結果、小児GVHD患者さんでの有効性が示され、また剤形の違いによる影響は認められませんでした10。安全性プロファイルについても、成人及び青少年を対象とした第III相試験で得られた結果と同様であり、小児における安全性が示されました。また、GVHDの小児患者さん向けに開発された小児用製剤である「ジャカビ®内用液小児用0.5%」の承認により、錠剤を嚥下することが困難な小児患者さんの服薬を容易にするとともに、体表面積での用量調整も、より正確にできるようになります。
今回の承認について、ノバルティス ファーマの代表取締役社長であるレオ・リーは、次のように述べています。「GVHDは同種造血幹細胞移植による治療を行う上で、大きな障壁になっています。今回の追加承認によって、ジャカビが小児の患者さんとそのご家族の希望の光となり、造血幹細胞移植による治療へ貢献できることを期待しております。」
「ジャカビ」の試験結果
<国際共同第I/II相試験(F12201試験/REACH4試験)10>
本試験は、28日齢以上18歳未満の未治療又はステロイド抵抗性の急性GVHD患者を対象とした国際共同第I/II相試験です。主要評価項目は投与28日時の奏効率(ORR)と定義され、ORRは84.4%(38/45名、90%信頼区間[CI]:72.8-92.5)でした。また、ステロイド抵抗性の患者の投与28日時のORR(補助的解析)は90.6%(29/32名、90% CI:77.5-97.4)でした。副作用発現頻度は51.1%(23/45名)で、主な副作用は、貧血9名(20.0%)、好中球数減少8名(17.8%)、白血球数減少7名(15.6%)、血小板数減少6名(13.3%)でした。
<国際共同第II相試験(G12201試験/REACH5試験)11>
本試験は、28日齢以上18歳未満の未治療又はステロイド抵抗性の慢性GVHD患者を対象とした国際共同第II相試験です。主要評価項目は投与24週時の奏効率(ORR)と定義され、ORRは40.0%(18/45名、90% CI:27.7-53.3)でした。また、ステロイド抵抗性の患者の投与24週時のORRは39.3%(11/28名、90% CI:23.8-56.5)でした。副作用発現頻度は57.8%(26/45名)で、主な副作用は、貧血7名(15.6%)、好中球減少症6名(13.3%)、好中球数減少及び血小板数減少各5名(各11.1%)でした。
「ジャカビ」(一般名:ルキソリチニブリン酸塩)について
「ジャカビ」は、経口投与のJAK阻害剤です。4種類存在するJAKファミリーのうちJAK1及びJAK2を選択的に阻害し、シグナル伝達兼転写活性化因子(STAT)等を介したサイトカイン及び成長因子のシグナル伝達を抑制することで、造血及び免疫機能を制御します。これまで、国内においては、2014年7月4日に「骨髄線維症」、2015年9月24日に「真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)」、2023年8月23日には「造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)」に対する治療薬としてそれぞれ承認を取得しています。また、「ジャカビ」は世界100カ国以上で承認されており、GVHDについては、急性GVHD、慢性GVHDに対してそれぞれ70カ国以上で承認されています。ノバルティスは、米国外における「ジャカビ」の開発及び販売を目的としたライセンスをIncyte社から取得しました。米国ではIncyte社がJakafi®という商品名で販売しています。
移植片対宿主病(GVHD)について
GVHDは、移植を受けた患者さんの健康な組織(宿主)をドナー(移植片)由来免疫細胞が異物とみなし、攻撃することで発症します。GVHDの症状は、皮膚、消化管、肝臓、口腔、眼、生殖器、肺、関節等の多様な臓器で認められる可能性があります1。GVHDの病態生理や臨床症状は小児と成人で概ね同様とされています。
ノバルティス ファーマ株式会社について
ノバルティス ファーマ株式会社は、スイス・バーゼル市に本拠を置く革新的医薬品のグローバル製薬企業、ノバルティスの日本法人です。ノバルティスは、より充実した健やかな毎日のために、「ともに、医薬の未来を描く(Reimagining Medicine, together)」ことを追求しています。
詳細はホームページをご覧ください。https://www.novartis.co.jp
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以上
参考文献
- 免疫不全・骨髄不全の同種造血幹細胞移植 | 国立成育医療研究センター (ncchd.go.jp). https://www.ncchd.go.jp/hospital/sickness/children/immunodeficiency-allogeneic.html#section5
- Carlberg V, Simons E, Delano S, et al. (2017) Pediatric Graft-Versus-Host Disease. In: Huang, J., Coughlin, C. (eds) Skin Tumors and Reactions to Cancer Therapy in Children. Springer, Cham, p. 105-23.
- Gatza E, Reddy P, Choi SW (2020) Prevention and Treatment of Acute Graft-versus-Host Disease in Children, Adolescents, and Young Adults. Biol Blood Marrow Transplant; 26(5):e101-12.
- 8-2. 急性移植片対宿主病|一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会 (jstct.or.jp). .https://www.jstct.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=21
- 11-1. 慢性移植片対宿主病|一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会 (jstct.or.jp). .https://www.jstct.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=37
- 日本造血細胞移植データセンター/一般社団法人 日本造血細胞移植データセンター 2023年度 全国調査報告書 別冊. https://www.jdchct.or.jp/data/slide/2023/
- Levine JE, Logan B, Wu J, et al. (2010) Graft-versus-host disease: why have we not made more progress. Curr Opin Hematol; 21(2):141-7.
- Jamil MO and Mineishi S (2015) State-of-the-art acute and chronic GVHD treatment. Int J Hematol; 101(5):452-66.
- 11-11. 小児の晩期毒性|一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会 (jstct.or.jp). https://www.jstct.or.jp/modules/patient/index.php?content_id=47
- Locatelli F, Kang HJ, Bruno B, et al. (2024) Ruxolitinib for pediatric patients with treatment-naïve and steroid-refractory acute graft-versus-host disease (REACH4). Blood; Online ahead of print.
- Locatelli F, Antmen B, Kang HJ, et al. (2024) Ruxolitinib in treatment-naive or corticosteroid-refractory paediatric patients with chronic graft-versus-host disease (REACH5): interim analysis of a single-arm, multicentre, phase 2 study. Lancet Haematol; 11(8):e580-92.
<参考資料>
ジャカビ®︎錠5mgと同錠10mg、ジャカビ®内用液小児用0.5%の製品概要
製品名(下線部が今回追加):
- 「ジャカビ®錠5mg」(JAKAVI®︎ Tablets 5mg)
- 「ジャカビ®錠10mg」(JAKAVI®︎ Tablets 10mg)
- 「ジャカビ®内用液小児用0.5%」(JAKAVI® Oral Solution)
一般名:
ルキソリチニブリン酸塩
(Ruxolitinib Phosphate)
効能又は効果*(下線部が今回追加):
錠5mg・10mg
- 骨髄線維症
- 真性多血症(既存治療が効果不十分又は不適当な場合に限る)
- 造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)
内用液 - 造血幹細胞移植後の移植片対宿主病(ステロイド剤の投与で効果不十分な場合)
用法及び用量*(下線部が今回追加):
錠5mg・10mg
<骨髄線維症>
通常、成人には本剤を1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。用量は、ルキソリチニブとして1回5 mg~25 mg の範囲とし、患者の状態により適宜増減する。
<真性多血症>
通常、成人にはルキソリチニブとして1回10mgを開始用量とし、1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。患者の状態により適宜増減するが、1回25mg、1日2回を超えないこと。
<造血幹細胞移植後の移植片対宿主病>
通常、成人及び12歳以上の小児にはルキソリチニブとして1回10mgを1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。患者の状態により適宜減量する。
通常、6歳以上12歳未満の小児にはルキソリチニブとして1回5mgを1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。患者の状態により適宜減量する。
内用液
<造血幹細胞移植後の移植片対宿主病>
通常、6歳以上12歳未満の小児にはルキソリチニブとして1回5mgを1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。患者の状態により適宜減量する。
通常、6歳未満の小児にはルキソリチニブとして1回4mg/m2を1日2回、12時間毎を目安に経口投与する。患者の状態により適宜減量する。
新規剤形承認取得日:
2024年9月24日
製造販売:
ノバルティス ファーマ株式会社
*「効能又は効果に関連する注意」、ならびに「用法及び用量に関連する注意」の詳細については、電子化された添付文書(電子添文)をご覧下さい。
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