ノバルティス バイオムが研究シーズのビジネス化を支援

起業家との協働を後押しするデジタルイノベーションラボ

May 15, 2019

デジタルヘルス分野では、ウエアラブルなセンサーからの生理学的データの収集、疾患の発症を予測するアルゴリズムなど革新的な技術が次々と開発されています。その多くは、デジタルイノベーターや投資家、未来志向の起業家らを巻き込んで成長するエコシステム*1によるものです。それらの技術は、製薬企業の創薬、開発、流通・販売方法を変え、より迅速かつ合理的な価格で薬剤を患者さんに提供できる可能性を秘めています。しかし、いかに有望な発明であっても、エコシステムの中にあるギャップを越えられず、医療技術革新へと結び付かないことがあります。それは多くの場合、その技術を開発した起業家らに市場化するためのリソースがないからです。

ノバルティスは、このような状況を打開するため、ノバルティス バイオム(Novartis Biome)を創設しました。ノバルティス バイオムとは、医療を向上させるための革新的な技術開発に情熱を注ぐ起業家を支援するデジタルイノベーションラボです。シリコンバレーがある米国サンフランシスコに拠点を置き、多様な協働・連携により、現在数々のオープンイノベーションを主導しています。

ノバルティス バイオムのイノベーション・アンド・ストラテジー部門の責任者で、共同創設者のロビン・ロバーツ(Robin Roberts)は「ヘルステクノロジーのエコシステムをさらに後押しし、起業家とノバルティスとの協働への道筋を作ることが目標です」と述べています。また「既成概念を覆す技術は、大手製薬企業からはなかなか生まれないことは、デジタルヘルス分野に関わる人たちの間では共通認識となっています。しかし私たちが起業家やイノベーターと協力することで、大胆で持続性があり、そして拡張可能な技術を一緒に作り出せるのです」と話しています。

ノバルティス バイオムと外部のイノベーターとの連携にはさまざまな方法がありますが、注力する1 つがヘルス・X・ワールド・シリーズ(Health X World Series)というイノベーションを選考する取り組みで、ある医療の課題に対するデジタルソリューションを募るというものです。初めての選考は、2018年9 月にテッククランチ(TechCrunch)が主催したイベント「ディスラプトゥ(Disrupt)」(米サンフランシスコ)で行われました。ここで30組を超える応募者から選ばれた5 組が心不全に関する課題についてプレゼンテーションを行い、この分野の権威で構成された審査員たちによって、優れたデジタルソリューションを提案した2 組が選出されました。ノバルティスはこのような選考会を、年に数回、世界各地で実施する予定です。

ノバルティス バイオムがイノベーターの技術の応用可能性を見いだすと、イノベーターたちは、ノバルティスの研究者と協働でアイデアを検証していくための研究を設計し、実行するチャンスが得られます。結果次第では、ノバルティスがその技術に投資する可能性もあります。イノベーターに最先端の作業環境や研究資源を提供し、アドバイスや指導も行うため、イノベーターにとって非常に貴重な機会となります。プルーフ・オブ・コンセプト(Proof-of-Concept:PoC)*2試験を具体的に設計するために、ノバルティスの膨大なデータセットを活用した実臨床ベースで検証を行うことが可能となる上、イノベーターの成長ニーズに応じて、12カ月間のカリキュラムも準備されます。ノバルティス バイオムの責任者で、共同創設者のモハナド・フォース(Mohanad Fors)は「もう1 つ、他と一線を画す大きな要素は、私たちは起業家に権利の譲渡を求めたりしないことです」と述べています。

ノバルティス バイオムは、ノバルティス内外のデジタル分野における優れた頭脳の連携をさらに拡大し、データサイエンティストやイノベーターが開発する技術の進化と応用を加速させ、ヘルステクノロジー全体への貢献を目指していきます。

*1 起業家、企業、投資家などの多数の要素が集まり、分業と協業による共存共栄の関係を構築すること

*2 適切に定義された患者における小規模臨床試験により作用機序および治療の有効性の仮説を検証すること