ノバルティスはグローバルに薬を開発しています。日本でも欧米と歩調を合わせて同じプロセスで開発が進められますが、承認申請先は厚生労働省/医薬品医療機器総合機構となります。
お店で買ったリンゴはどこから来たのか、おおまかに追跡することはできるでしょう。店は卸売業者を通じ、リンゴを栽培する農家から仕入れます。でも、例えばがんと診断されたあなたやあなたの友人や家族に、医師が処方した薬については、どうでしょうか?
自分や親しい人が口にする食品がどこから来たのか知る権利があるのと同様に、患者さんは処方薬がどのように開発されるのかを知る権利があると、ノバルティスは考えています。ノバルティスにおける薬の開発へのアプローチは、患者さんに始まり、患者さんに終わります。研究を始めるにあたり、ノバルティスは自らに2つの質問を投げかけます。
- 疾患の発症メカニズムや原因を理解しているか
- この疾患に対する新しい治療法が強く求められているか
これら2つの質問の答えがYesである場合、ノバルティスは、がんへの理解を深めるとともに、薬を必要とする患者さんのための候補治療薬の探索を目的とした研究プログラムを策定します。また、米国における画期的新薬(breakthrough therapy)や優先審査(priority review)などのような治療薬開発を加速しうる方法について、米国食品医薬品局(FDA)および欧州医薬品庁(EMA)などの規制当局と協議します。
これが、がんに対する候補治療薬の開発の始まりです。初期の研究段階から医師が処方に至るまで、次のようなプロセスを経ることになります。
- 標的の発見:ノバルティスの研究者は、乳がんや肺がんなど疾患のメカニズムを特定しようとする際、パスウェイアプローチという手法を用います。体内でタンパク質が相互作用の経路(パスウェイ)を形成する様子を観察し、病状の進行を遅延または抑制するにはどのタンパク質を標的にすべきかを見いだします。
- 治療薬候補物質の発見:次に、コンピューターモデリングなどの手法を用いて、同定したタンパク質に結合し、その機能に影響を与えることができる化合物または生物学的物質(遺伝子、タンパク質や細胞など)の発見に取り掛かります。
- 非臨床試験:候補物質が特定されると、動物を用いた試験が開始されます。疾患の複雑なメカニズムや安全性、薬物動態(薬が体内でどのように吸収されるか)は、動物実験でしか確認できない場合も多いのです。ノバルティスは、動物愛護の観点から動物実験を必要最小限としており、医薬品業界の規制や基準に沿って科学的に容認できるものであることを常に確認しています。
- 臨床試験(治験):ヒトでの臨床評価の準備が整えば、開発中の治療薬を臨床試験に進めるために、米国では新薬臨床試験開始申請(IND; Investigational New Drug application)、またはEUでは臨床試験開始申請(CTA; Clinical Trial Application)を行います。終了までに何年も要する臨床試験は次の3つのフェーズを経て進行します。
- フェーズI(第I相臨床試験):以下を目的に、一般的に少数の患者さんを対象に実施される。
- 開発中の治療薬の安全な投与量を確認する
- 開発中の治療薬の投与方法を決定する
- 開発中の治療薬が体内でどのような影響を及ぼし、がんの治療に役立つかを確認する
- フェーズII(第II相臨床試験):以下を目的に、中規模の数(100例以下)の患者さんを対象に実施される。
- 開発中の治療薬が特定のがんに対して効果があるかどうかを見極める
- 開発中の治療薬が体内でどのような影響を及ぼし、がんの治療に役立つかを確認する
- フェーズIII(第III相臨床試験):以下を目的に、一般的に大規模な数(100例から数千例)の患者さんを対象に実施される。
- 開発中の治療薬を現在の標準治療薬と比較する
- PoC (Proof of Concept):ノバルティスは、フェーズIとフェーズIIの両方の目的を持ち合わせたプルーフ・オブ・コンセプト(コンセプト実証)試験も実施しています。これらの小規模な臨床試験は、最も有望な治療薬の候補化合物を見つけ、開発を前進させるために必要な治療薬の安全性・有効性を早期に理解するのに役立ちます。
- フェーズI(第I相臨床試験):以下を目的に、一般的に少数の患者さんを対象に実施される。
- 承認申請:一般的に、フェーズI~IIIの臨床試験が終了した後、薬事担当チームがFDAやEMAなどの規制当局に開発中の治療薬の申請戦略についてのガイダンスを求めます。FDAには新薬承認申請(NDA; New Drug Application)を、EMAには販売承認申請(MAA; Marketing Authorization Application)を提出します。申請資料には、各臨床試験に関する情報、添付文書案、安全性に関する最新情報、患者さんに関する情報、服薬指導などが含まれます。
- 承認:FDAまたはEMA関連または内部の委員会が申請内容を評価し、治療薬を承認、あるいは特定の問題への対応を求めます。承認後、治療薬は、医師が処方できるよう市場に流通される準備が整います。しかし、研究はここで終わりではありません。薬事規制上の観点から、承認時点で継続中の試験の遂行、市販後調査等の実施、添付文書の改訂など数多くの活動が必要となります。
臨床開発の各段階から承認後に至るまで、規制当局への報告が求められており、安全性・有効性の評価に基づいて決定が下されます。開発中の化合物一つひとつについて、研究者、化学者、疾患領域の専門家、臨床医などの様々な領域から構成される担当チームがともに働いています。ノバルティスは、世界各国の保健当局と緊密に連携し、課題への速やかな対応と患者さんへの一刻も早い治療薬の供給に取り組んでいます。
治療薬の承認はチームとしての努力なしには達成できず、何年にもわたる献身と努力が必要です。ノバルティスで開発に携わるチームは、新たながん治療薬の開発への熱意によって団結しており、これがノバルティスの社員の日々のモチベーションになっているのです。
本文はwww.novartisoncology.comより翻訳、編集したものです。 The Life of a Cancer Drug at Novartis Oncology