加齢黄斑変性症との闘いは、独りではなく仲間と乗り越える
高齢者が徐々に視力を失う原因ともなりうる加齢黄斑変性症との闘病が始まった時、吉川さんは「地元柴又のラジオ体操の役員をもうできないのではないか」とふさぎ込みました。この疾患は中心視力が徐々にぼやけ、本を読んだり、顔を認識したりするのが難しくなり、しばしばうつや孤独感を引き起こします。
医療機関で偶然目にした情報で、加齢黄斑変性症の患者交流会を知った吉川さんは、その後設立された患者団体「加齢黄斑変性友の会」に世話人として加わり、今ではメンバーの患者仲間からの情報収集や支援などの活動を通じて、加齢黄斑変性症の啓発に取り組んでいます。吉川さんは、発症後、大好きなラジオ体操からも離れがちでしたが、同じ疾患を持つ患者さんから参加を続けるよう勧められ、直射日光から目を保護するためにサングラスをかけるなどの工夫をしながら前向きに参加しています。
「加齢黄斑変性友の会」は、患者さんの経験などから、受診時に医師に効率よく相談する方法、最適な治療の選択、医療費の管理などの様々な現実的な問題について情報を収集し、ニュースレター、集会やウェブサイトを通じて、アドバイスを紹介しています。一例として、スマートフォンを使ってバスの時刻表を読む方法(小さい文字を写真に撮り画面を拡大する)、目の見えにくさを補う生活のヒントなども提供してきました。何より大切なこととして、この病気による心理的な影響に対処するために社会的な交流を継続し、できる限り普通の生活を維持することを目指しています。
全世界で約1億7000万人が罹患
加齢黄斑変性症は、世界での人口の高齢化に伴い増加が予測されます。世界で最も高齢化が進んでいる日本において、加齢黄斑変性症の患者数は70万人に上ると推定されます1)。全世界では約1億7,000万人が加齢黄斑変性症を患っており、2020年までに2億人近くに達すると予想されています2)。
「加齢黄斑変性友の会」のメンバーたちは、さまざまな角度からこの病気に対処する方法を見出しています。
吉川さんとともに「加齢黄斑変性友の会」に世話人として加わった元教員の綾部さんは、視力低下が進んでいるものの、娘夫婦が仕事から帰ってくるまでの間、孫たちを世話するなど、積極的に行動しています。
「加齢黄斑変性友の会」で代表を務める高橋さんは、ご自身が良い手本となっています。他の患者さん同様、目を保護するためのサングラスをかけ、奥さんと一緒に趣味の野菜作りに、日々街中の自家菜園まで自転車を走らせています。高橋さんは、加齢黄斑変性症であることが分かってから、他の多くの患者さんたちと同様に不安や孤独感を経験しました。それでも医薬品業界で定年まで働いていた高橋さんは、医療の世界をさらに深く学び、自身の知識を活かしていこうと決意しました。
「加齢黄斑変性友の会」には、現在約100人の会員がおり、患者さんに貴重なアドバイスやサポート、励ましを送っています。高橋さんは、自家菜園で世話をする野菜のように患者団体の活動が根付きつつある今では、それが時間とともに花開き成長していくことに、自信を持っています。
加齢黄斑変性友の会 https://sites.google.com/site/amdtomonokai/
https://www.eye-frail.jp/
加齢による目の機能低下「アイフレイル」について様々な情報が掲載されています。