南雲 悠平さん
Business Analyst, Customer data & Analytics, BE&E
各部署に「エヴァンジェリスト」を
私は2017年に新卒でノバルティスに入社しました。医薬情報担当者(MR)として入社し、新潟と岡山で3年間にわたって血液腫瘍領域を担当していました。現在はCustomer Data & Analytics (CD&A)に所属し、データや教育を軸に仕事をしていますが、元々そういった知識を持って入社したというわけではありません。
MRを経て、社内公募で市場調査のチームに異動となりました。製品の使用状況の調査、製品の評価の調査、製品の課題の発掘などが主な業務となります。当時の業務は、その後CD&Aに異動を希望する理由のひとつにもなっています。
自ら希望し、CD&Aに異動したのは2023年のことです。それには大きく2つの理由があります。ひとつめは、データについてより深く学びたかったこと、データによる意思決定に興味がありました。市場調査チームでもデータは扱っていましたが、よりデータを専門的に扱う部署で働きたいと思ったんです。
ふたつめは、データを集める倉庫が必要だと感じていたこと。市場調査でデータを扱っていましたが、社内のデータはあちこちに散らばっていて、フォーマットも少しずつ違っていました。それらを統合して分析をしようとすると、すごく扱いづらく、時間もかかります。データをひとつに集める倉庫のようなものが必要だと感じていました。そしてまさにそれをやろうとしていたのが、CD&Aという部署でした。
CD&Aでは、私は主に「教育」を担当しています。中でも今、最も力を入れているのが、「アナリティクスブートキャンプ(ABC)」というプログラム。本プログラムは研修、コミュニティ、業務支援という3つの施策を通して、データ利活用による「ビジネス」「データマネジメント」「アナリティクス」の基礎が学べるというプログラムです。
このプログラムの目的は、伝道師(エヴァンジェリスト)の育成にあります。エヴァンジェリストにはデータ利活用のノウハウを自分の部署に持ち帰ってもらい、広めてもらいたいと考えております。エヴァンジェリストに活躍していただくため、ABCでは研修のみならず、エヴァンジェリストのデータ活用業務の改善までフォローアップすることで、ABCで学んだことを実務でも活用できる支援体制を構築しています。各部署にエヴァンジェリストが1人でもいれば、ノウハウは枝葉的、連鎖的に浸透していきます。1人から2人に。2人から4人に。スタートは狭く、段々と広げて行くことが大切だと思っています。
現在、アナリティクスブートキャンプの第2弾が終了したところです。参加は自由で、結果的に80名弱の参加者が集まりました。
エヴァンジェリストによる拡散というフェーズはまだこれからですが、参加者からはすでに「毎週Excelで同じ作業をしていたことを、自動化できるツールにおきかえたことで、業務時間が短縮されたしコストも下がった」というようなお声もいただいています。ブートキャンプは今後も、第3弾、第4弾と新たな参加者を募り継続していく予定です。
データ利活用がされやすい「環境」をつくる
アナリティクスブートキャンプの実施には、課題も多くありました。研修内容を策定するために、参加対象の各部署に対しヒアリングを行いました。どんな業務をしているのか、その中でどんな作業にデータを活用しているのか、今後データ利活用を高度化するためにどんな課題を持っているのか、学びたいことは何なのか。それぞれの部署で、計9回ヒアリングをしました。そしてヒアリング内容を基に、ビジネス、データマネジメント、アナリティクスの3点からなる6角形のチャートを作成。現在の状況を表したチャートと、各部署の課題を達成するのに必要なスキルを表したチャートを視覚化し、各部署に説明、共有しました。
実際にプログラムをやってみたことで、見つかった課題もありました。例えば、コミュニティが我々の考える理想型に至っていないという点。今は参加者から質問があると、我々CD&Aが答えるという構図になっています。最初はそれでいいかも知れませんが、ゆくゆくは参加者同士で「あぁでもない、こうでもない」と相互コミュニケーションをとってもらう形にしたいと考えています。参加者の皆さんの中にまだ研修側と受講者側というイメージがあり、受け身になってしまっているのかもしれません。確かに我々は教える側ではありますが、データについてもっと学ばなければいけないという意味では、参加者と同じ立場でもあります。どうしたら立場にとらわれずにディスカッションできるのか、今後の課題です。
そしてもうひとつ大きな課題としてあるのが、リーダー層への働きかけです。現場のスキルレベルが上がっても、環境によっては、それを充分に活かすことはできません。データ利活用が会社に、製薬業界に、そして何より患者さんにどんなメリットをもたらすのか。それを伝え、適正な戦略策定や投資判断に繫げるのも、我々の任務のひとつだと思っています。
我々は「民主化」を最も大きなミッションとしています。民主化とは、誰もが社内のデータに自由にアクセスができて、必要なデータを組み合わせて、簡単な分析ができるような環境とスキルを構築すること。教育も、そのための一つの柱です。
CD&Aの活動により、社内の業務が効率化し、意思決定が精緻化されることで、医師の方へもっと迅速に、もっと適切な情報を届けることができます。それは、より多くの患者さんに薬を届けることに繋がるはずです。患者さんへの貢献は、総力戦。1人でも多くの患者さんの笑顔につながるよう、これからも頑張っていきたいと思います。