ノバルティスは、本年4月2日付けで公表されたSIGN研究に関する社外調査委員会の調査結果において、弊社社員による弊社安全性評価部門への有害事象報告遅延が判明したため、他にも同様の報告遅延がないか全社で一斉調査を行いました。
安全性情報については、社員が有害事象を入手後、社内の安全性評価部門に24時間以内に報告する社内ルールを定めています。安全性評価部門では、報告された症例を評価し、薬事法に従って当局に必要な症例を報告します。今回、社内調査により社員から安全性評価部門への報告遅延が疑われる症例が確認されましたので、現状を厚生労働省に報告いたしました。
今後、これらの報告遅延例の中には、薬事法で求められているPMDAへの報告事象(重篤かつ因果関係が否定できない場合)が含まれている可能性がありますので、早急に個別症例の評価(重篤性、因果関係、既知・未知など)を行ってまいります。
【調査により現在までに判明した事実】
調査は4月11日(金)から4月18日(金)まで全社員約4,500人を対象に実施しました。社員から安全性評価部門へ提出された資料の多くは、電子媒体の記録や手書きのメモ、医師が社内講演会で発表したスライドなどでした。
- これまでに製品名が特定できた資料の範囲と、確認作業が未完了な資料の範囲から推定すると、約10,000例分の資料が社員から弊社の安全性評価部門に提出されたと考えられます。このうち、当局報告対象となる有害事象がどの程度含まれているかは現在確認中です。
- 今後、社内有害事象評価プロセスに従って症例評価を行います。その結果、必要に応じて主治医に詳細情報の提供を依頼し、最終評価が確定したものから順次当局に報告します。
【症例数が多い理由】
今回、安全性評価部門に提出された症例数が多い理由としては以下が考えられます。
- 報告対象に期限を設けていないこと(現時点で、最も古い事象は2002年)
- 以下のような重複症例が相当数あると考えられること
- 有害事象に関する情報は全て提出するよう指示したことから、すでに提出済みの事象を再度提出した。
- 複数の社員が同一の症例について提出した。
【報告遅延が起きた理由】
- MR活動において営業活動に重きをおく傾向にあり、また上長による指導や確認が十分ではなかったため、入手した有害事象を適切に安全性評価部門に報告することへの意識の甘さがあったと考えています。
【再発防止策】
弊社は今回の事案を非常に重く受け止め、以下の再発防止策を検討し、早期に実施します。
- トレーニング
- 有害事象報告の徹底について、MRの上長を含めて、再度研修を行います。その後においても、継続的に有害事象報告の必要性についてリマインドします。
- 報告システムの改善
- 有害事象が効率的かつ確実に報告されるように、現在の有害事象報告システムやツールを見直します。
- 人事評価項目にGVP※に関する項目を設定
- 有害事象報告について、人事考課の評価項目を設定することで徹底を図りたいと考えます。
※ GVP Good Vigilance Practice: 医薬品などの製造販売後の安全管理基準
製造販売業の許可要件のひとつ。医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器の適正使用情報の収集・検討・市販後安全確保措置の実施に関する厚生労働省令。
なお、スイス本社は、各国の規制当局に対して今回の有害事象に関する遅延報告を行う必要があり、各国規制当局に対して事前に状況を説明する文書を送付しています。
弊社は、製薬会社にとって極めて重要な有害事象報告において遅延が起きていたことを非常に重く受け止め、早期に全症例の評価を完了させ当局に報告するとともに、今後はこのような事態を繰り返さないよう全社を挙げて再発防止に取り組んでまいります。