全ての社員に平等に学ぶ機会が与えられているラーニング・カルチャーに感銘を受け
ノバルティスでの人材育成を志す
トム・メィーズ Tom Mayes
ラーニング・インスティテュート
全社員の育成をサポートするノバルティス・ラーニング・インスティテュートは、2年前(2019年)に設立された比較的新しいチームです。私は、日本のリージョンのヘッドを1年半務めています。ラーニング・インスティテュートは、スイスのバーゼルに本拠を置くグローバルなチームで、ノバルティスで働いている社員が、世界中どこに行っても、同じように質の高い教育にアクセスできるようにすることをミッションとしています。
私は前職でも人材育成の仕事に携わっていたのですが、ある日、ノバルティスのラーニング・インスティテュートの前ヘッドの話を聞く機会がありました。ノバルティスのカルチャーについて教えていただき、とてもシンプルだけど魅力的で、驚くと同時に胸が躍ったのを覚えています。
というのも、それまでの民間企業の人材育成のあり方に、疑問を抱いていたからです。「君に必要なのはこれだから、この講座を受けなさい」「自分の業務に直結するもの以外は、課外活動とみなす」と言わんばかりの、トップダウン型で狭量なやり方だったんです。
一方、ノバルティスの人材育成はとても民主的でした。全社員に質の高い教育の機会を提供する。それを活用したい社員なら誰でも活用できる。社員が1年間で100時間を自分が好きな学習に割く「年間100時間ラーニング」などの仕組みも新鮮でした。そんな考え方を共有する企業でなら、ラーニング・カルチャーを促進する仕事をやってみてもいいな、と考えて転職を決めました。
必要なのは強いリーダーではなく
本音を語り合える信頼感
ノバルティスのカルチャーであるICU(Inspired, Curious, Unbossed)を、すべての社員が体現できて、毎日仕事ができるようになったら、本当に素晴らしい会社になると思います。そして、どのカルチャーも私が100%コミットできるものだと感じているので、とてもワクワクしています。
また、激変する社会で生き残り、さらに価値ある製品を生み出すためには、ICUが不可欠だと思います。
たとえば、社会がかつてない勢いで変わっているときこそ、社員1人ひとりに明確なInspiration(Inspired、自らを鼓舞し互いを刺激し合う)が必要になります。この刺激は、“北極星”になって私たちが行きたいところに導いてくれるはずです。
そして、いま私たちが直面している課題のほとんどは、簡単に解決できるものではありません。そういうときこそCurious(好奇心を持つ)をもって、最適なソリューションを追い求める精神が欠かせません。
Unbossed(主体性を持って自ら動く)も大切です。トップダウンの意志決定は、時間を要します。社員1人ひとりが自立して、責任を持って、必要に応じて方向性を変えられるようにならなければ、時代の流れに取り残されてしまいます。
ラーニング・インスティテュートのリーダーとしては、特にInspiredに気を配っています。たとえば、カルチャーを醸成するためには、リーダーがロールモデルになることが重要ですので、部下だけではなく、他部署の社員にも分け隔てなく、自分のパーパスや目標、課題、キャリア・アスピレーションをオープンにするようにしています。
つい最近も、チームのメンバー3人でオフサイト・ミーティングをした際に、直接会ってリアルな心境を話し合ったのですが、私は「最近は目先の業務が忙しすぎて、『バーゼルの本社で働く』という目標のために、なんのアクションもしていない」と吐露したばかりです。
常に“強いリーダー”を見せなければならないわけではないんですね。弱みや本音を見せ合うと、お互いの良いところ、改善すべきところも見えてきますし、信頼が生まれて、より的確なアドバイスやフィードバックができるんだと思います。
社員1人ひとりのパーパスの実現が
素晴らしい社会につながる
このように少数精鋭のメンバーで頑張っていますので、チームのメンバーが賞賛されると、達成感を感じます。
ノバルティスではアプリを使ったシステムが導入されていて、いい仕事をしたときや助けてもらったときに、そのシステムを使ってポイントを付与することができるんです。ポイントがたまると、ギフト券などに交換できます。ここ1〜2カ月は、毎週のように通知が入ってくるので、とてもうれしく思っています。
もちろん、直接感謝の言葉を伝えられることもあります。ラーニング・インスティテュートが設立された当初は、「いったいどんなチームなのか?」と距離を置かれている気がしていたのですが、最近はプレゼンスが高まってきたと実感しています。
それでもまだ、社内のおよそ7割は、ラーニング・プログラムに積極的に参加していません。主体的なラーニング・カルチャーの醸成には、まだまだやるべきことがあるのです。
私が目指すラーニング・カルチャーは、もっと多くの社員が自らのパーパスや目標を考えて、それに向かっていくためにどのようなラーニングが必要なのか、自分なりに考えて、学ぶ機会を最大限に活用する文化です。その目標を達成するために、2つの具体策を実践しています。
1つは、頻繁にラーニング・プログラムの情報を発信すること。まずは一斉メールを送りますが、見ない人はたくさんいます。ですから、部門内のワークショップやミーティングなど、できるだけ社員がいる場に出向いて、直接話をするようにしています。
2つ目は、マネジャー(上司)への働きかけです。マネジャーが積極的に学んで、部下にその成果を共有できる企業ほど、ラーニング・カルチャーが醸成されます。ですので、マネジャーを対象とした特別セッションを頻繁に開催して、社内にどのようなラーニング・リソースがあるのかを伝えるようにしています。
私のパーパスは、「社員が自分のパーパスを見つけて、それを実現できるように支援をする。そして、それをすることでよりよい社会をつくること」です。
明確なパーパスを持って、それに向けて活動ができている人は、人生が豊かで満足しています。全員がそうやって生きていける社会が実現できたなら、素晴らしい世の中になるはずです。
幸い、ラーニング・インスティテュートの仕事は、私のパーパスを実現するのに最適な仕事だと思っています。
私たちのプログラムを体験した社員が、何かを学び、パーパスをより明確にし、より一層仕事に励めるようになったら、その“生き生き”が、ゆくゆくは患者さんに届くはずです。